値下げが中小企業にもたらす5つのリスク(前編)
値下げ自体は、値札の価格を書き換え、ちょっとしたPOP(商品につける掲示物)をつければすぐにできますから、ライバル店は売り上げが奪われたことを知ればすぐに対抗値下げをするでしょう。そうすると、値下げで売り上げを増やしたあなたの店の魅力はなくなり、売れる数は元に戻ってしまうのです。こうなってから、値段を元に戻そうとすると、今度はあなたの店の売り上げが奪われますから、戻すことはできなくなっています。
このように値下げは、一時的に売り上げを伸ばしても、すぐにまわりに伝わり、結果として利益率を低下させただけになってしまうのです。
2.商品や企業・店の価値(イメージ)を損ねる
値下げの怖さは、単に目先の利益率の悪化だけではありません。値下げが常態化することで、長期的に、店や会社の商品の価値を傷つけ、イメージを悪化させていくのです。
最近では100円均一の店舗が増えています。商品も数多く取り揃えられ、以前はあまり取り扱いがなかった食品なども売られるようになっています。ちょっとこの100円ショップの売り場を思い出して考えてみてください。あなたは、100円ショップで売っているとわかっている商品を、別の店で例えば150円出して買うでしょうか。おそらく買わないと思います。
もちろん、絶対に買わないわけではなく、ひょっとしたら買う場合もあるかもしれません。コンビニエンスストアや自動販売機で、割高だと知っていてジュースを買うような場合です。
でもその場合でも、100円均一の店で同じものが売っていることを知っていれば、何か損したような気分になるのではないでしょうか。その商品が100円で売れるものだと、つまり100円の価値だと知ってしまったのですから、損した気分になるのは当たり前です。
値下げをすることは、それまで150円だった商品が「100円でも売れる商品である」ことを知らせているのと同じことです。それを知った上で150円の店で買う人は、かなり少なくなることは間違いありません。
さらに恐ろしいのは、常に値下げしている状態が続くと、「あの店は値下げした安い商品だけを買うための店」とか、「あそこは言えば値引きしてくれる会社」というイメージを持たれてしまうのです。
これは何より恐ろしいことで、ひとたびイメージがつくと、初めて仕入れる新商品であっても値下げなしで売れなくなるのです。たとえ正価で売ろうとしても、「あそこはそのうち安売りするから、今は買わないでおこう」と思われてしまいます。もっとひどい場合には、「この商品についてはよく知らないけど、あそこで売ってるくらいだからきっと大したものじゃないに違いない」とまで思われる場合もあります。