最新記事

経営

値下げが中小企業にもたらす5つのリスク(前編)

2015年10月22日(木)16時50分

 値下げ自体は、値札の価格を書き換え、ちょっとしたPOP(商品につける掲示物)をつければすぐにできますから、ライバル店は売り上げが奪われたことを知ればすぐに対抗値下げをするでしょう。そうすると、値下げで売り上げを増やしたあなたの店の魅力はなくなり、売れる数は元に戻ってしまうのです。こうなってから、値段を元に戻そうとすると、今度はあなたの店の売り上げが奪われますから、戻すことはできなくなっています。

 このように値下げは、一時的に売り上げを伸ばしても、すぐにまわりに伝わり、結果として利益率を低下させただけになってしまうのです。

2.商品や企業・店の価値(イメージ)を損ねる

 値下げの怖さは、単に目先の利益率の悪化だけではありません。値下げが常態化することで、長期的に、店や会社の商品の価値を傷つけ、イメージを悪化させていくのです。

 最近では100円均一の店舗が増えています。商品も数多く取り揃えられ、以前はあまり取り扱いがなかった食品なども売られるようになっています。ちょっとこの100円ショップの売り場を思い出して考えてみてください。あなたは、100円ショップで売っているとわかっている商品を、別の店で例えば150円出して買うでしょうか。おそらく買わないと思います。

 もちろん、絶対に買わないわけではなく、ひょっとしたら買う場合もあるかもしれません。コンビニエンスストアや自動販売機で、割高だと知っていてジュースを買うような場合です。

 でもその場合でも、100円均一の店で同じものが売っていることを知っていれば、何か損したような気分になるのではないでしょうか。その商品が100円で売れるものだと、つまり100円の価値だと知ってしまったのですから、損した気分になるのは当たり前です。

 値下げをすることは、それまで150円だった商品が「100円でも売れる商品である」ことを知らせているのと同じことです。それを知った上で150円の店で買う人は、かなり少なくなることは間違いありません。

 さらに恐ろしいのは、常に値下げしている状態が続くと、「あの店は値下げした安い商品だけを買うための店」とか、「あそこは言えば値引きしてくれる会社」というイメージを持たれてしまうのです。

 これは何より恐ろしいことで、ひとたびイメージがつくと、初めて仕入れる新商品であっても値下げなしで売れなくなるのです。たとえ正価で売ろうとしても、「あそこはそのうち安売りするから、今は買わないでおこう」と思われてしまいます。もっとひどい場合には、「この商品についてはよく知らないけど、あそこで売ってるくらいだからきっと大したものじゃないに違いない」とまで思われる場合もあります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中