最新記事

食品

商品化迫る、人工ハンバーガー

牛の幹細胞から作る人工肉は、飢えや環境破壊を解決する第一歩

2015年10月19日(月)13時24分
ニック・ウィンチェスター

より倫理的? 世界初の人工バーガーを披露するポスト教授(2013年) David Parry-REUTERS

 実験室でハンバーガーの培養を試みているオランダの研究者たちが、5年以内の一般販売に自信をみせている。

 このハンバーガーの最初の試作品作りにはグーグルの共同創業者セルゲイ・ブリンが資金を提供し、2013年にはロンドンで試食もした。その製造コストは実に33万ドル。だがBBCニュースによれば、オランダのマーストリヒト大学の科学者グループは、このハンバーガーの味と質を改善し、尚かつ誰にでも買える値段できそうな感触を得ている。

「この製品がついに発売されるかもしれないと思うと、とても興奮する」と、ポール・バーストレイトは言う。マーストリヒト大学の科学者らと共に人工肉メーカー「モサ・ミート」を設立した人物だ。「我々のバーガーが肉の代替品として店頭に並べば、我々のバーガーを選ぶ人が日増しに増えていくだろう。そのほうが倫理にかなっている」

たんぱく質を縫い合わせて成型?

 牛の幹細胞から培養して作られるこのハンバーガーは、世界的な食糧不足と、食糧生産が環境にもたらす悪影響を解決するための、実現可能な最初の1歩だと、開発者であるマーク・ポスト教授は言う。

 この人工肉は、牛の幹細胞から取り出された紐状のたんぱく質を何千も束にして縫い合わせて成型したもの。精肉の過程でしばしば問題になる動物虐待の防止にもなると期待されている。

 血管生物学者のポストが2013年にロンドンで彼のバーガーを初めて発表したとき、彼は英ガーディアン紙にこう語っている。「牛は15グラムの動物性たんぱく質を生産するために100グラムの植物性たんぱく質を必要とする。非常に効率の悪い動物なのだ」

「我々は自分たちの必要を満たすために牛に大量の餌を与えている。そのせいで多くの食糧が無駄になる。人工バーガーがあれば、もっと効率的に食糧生産ができるし、牛を殺す必要もなくなる」

 モサ・ミートは25人の科学者や技術者を雇って人工肉の大量生産を目指す。人工肉をステーキやポークチョップの形に成型するのに、3Dプリンターを使うことも考えているという。
 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 買春疑惑で

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中