パジャマで出社でもOKのほうが、アイデア満載の会社になる
ダリは夢と芸術を結合させて、シュールレアリスムを生み出した。
火と食物を結合させた誰かが、「料理」を始めた。
ニュートンは、潮の満ち引きとりんごが落ちる現象から重力を発見した。
ダーウィンは、飢饉(ききん)や伝染病と種の繁栄を組み合わせて考え、進化論を導き出した。
ハッチンズはアラームと時計を結合させて目覚まし時計を思いついた。
リップマンは鉛筆と消しゴムを一緒にして消しゴムつき鉛筆を考案した。
わたしは昔、シカゴのある広告代理店に面接を受けに行ったことがある。ビルに足を踏み入れたとたん、そこがアイデアにあふれた素晴らしい職場だということがわかった。エレベーターを降りると、額入りのこんな言葉がものものしく壁にかかげてあった。
緊急時の避難マニュアル
一、すぐにコートを手に取りなさい。
二、帽子も手に取りなさい。
三、仕事はすべてデスクに置いてきなさい。
四、さあ、陽のあたる戸外でくつろごう。
まさに「異なった二つの思想」の出合いである。ユーモアと創造性。そのどちらかだけを手に入れるのは難しい。楽しむこととアイデアについても、楽しむことと仕事の出来についても同じことが言える。
一つ例をあげよう。わたしが広告業界で働きはじめたころは、コピーライターもアートディレクターも、普通のビジネスマンと同じ格好をしていた。男性はスーツにネクタイ、女性はワンピースかスーツだった。
ところが、一九六〇年代後半に状況はがらりと変わった。セーターやジーンズ、Tシャツ、テニスシューズが職場に進出しはじめた。当時、クリエイティブ部門のトップだったわたしはロサンゼルス・タイムズ紙の取材を受け、ああいう格好で職場に来る人をどう思うか、と聞かれてこう答えた。
「パジャマで出社したって構わないよ。いい仕事をしてくれるならね」
この発言が新聞に載った翌日、クリエイティブ部門の人間は当然のごとく全員がパジャマ姿で出社してきた。やられた。オフィスには笑いがあふれた。
何よりよかったのは、その日から数週間、それまでになく仕事が快調に進んだことだ。スタッフが楽しんで働いたことで、生産性が上がったのだ。
ここで、因果関係をもう一度はっきりさせておこう。まずは楽しむことだ。いい仕事は、その結果としてついてくる。楽しむことで創造性が解き放たれる。それはアイデアを手に入れるためにまく「種」の一つなのだ。
それに気づいたわたしたちは、職場に来るのが楽しくなるように、もっと多くの「種」をまきはじめた。そのうちのいくつかはあなたの職場でも使えるかもしれないし、ほかの「種」を考えつくヒントになるかもしれないので、ここにあげておこう。
公園会議 月に一度くらいの割合で、オフィスの向かいにある公園で会議を行なう(オフィスを出るだけで、びっくりするほど和気あいあいとし、仕事もはかどるものだ)。
ファミリーデー 年に一度、社員の子供たちを会社に招待し、職場を見学してもらう。