チェ・ゲバラから「ピッチ」の秘訣を学ぶ
自分を売り込むために必要な特質は、世界のカリスマたちを見ればわかる
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このところビジネスの現場では、「ピッチ(pitch)」という言葉がよく聞かれる。一体どういう意味だろうか。
『シリコンバレーの英語』(ロッシェル・カップ、スティーブン・ガンツ共著、IBCパブリッシング)によれば、ピッチとは「人、アイディア、ビジネス、あるいはプロジェクトなどについて、興味、熱意、あるいはプロダクトへの資金投資を引き出すことを目的とした、あらゆるタイプの説得力のあるプレゼンテーションのこと」だ。
その「ピッチ」が人生をも左右するのだと、英国デザイン界の第一人者スティーブン・ベイリーと、作家でありビジネスエキスパートでもあるロジャー・マビティは言う。彼らの共著『たった2%の"ピッチ"が人生の98%を変える』(黒澤修司訳、CCCメディアハウス)には、自分を売り込み、相手をその気にさせるテクニックと考え方が詰まっている。
本書によれば、「ピッチとは相手を説得することであり、相手に好ましい印象を与えて取引に成功し、議論に打ち勝つこと」だ。しかもビジネスだけに留まらず、「性的な、あるいは社交的な意味で、相手との繋がりをつくることでもある」という。
さまざまなエピソードが盛り込まれた本書から、「27 他者と違う自分になる勇気」と「28 ビジネス人生では感情が大事」を抜粋し、前後半に分けて掲載する。まずはカリスマ性に関する考察から、「ピッチ」に不可欠な特質を見ていこう。
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『たった2%の"ピッチ"が人生の98%を変える』
スティーブン・ベイリー、ロジャー・マビティ 共著
黒澤修司 訳
CCCメディアハウス
27 他者と違う自分になる勇気
自説を述べたり自己表現したりしている人々を見ていると、その中に戦う前からすでに勝者だと思えるような人物がいる。カリスマ性という、とらえどころのない資質を持った人間だ。カリスマ性は、他者の目には一目瞭然でも、身につけるのは恐ろしく難しい特別な才能のように思える。とはいえ、カリスマ性の真の魔力は、他者とはやや違ったものになる勇気をもつことの中にあるのだ。
いったいカリスマの真の意味は何なのか? それは、本人の言動とは無関係な、人々を興奮させ、惹きつけてやまない独特の要素を備えた人間のあり様のことである。カリスマ性を持った人間は、何もせずそこにいるだけで人が集まってくる。言葉にせずともわかるほど強力な、天然の威光と魅力を備えている。
カリスマ的人間は、常にとてつもない自信をもっている。運命として自らに降りかかってくる何もかもを処理できるかのように振る舞う。その一方で、こうした人物は、他者を深く信頼する姿勢を示し、この信頼が人々を奮い立たせる。マーガレット・サッチャー首相の側近ティム・ベルは、彼女について私にこう語った。
「彼女はとても特別な人でした。彼女は、『あなたを雇ったのは専門家だからです。だから私は、あなたが言ったとおりのことをするつもりです。仕事の指示を私に仰いだりしないでください。そのために雇ったんですから』というわけです。彼女は専門分野では全権を委ねてくれましたが、自分の仕事には口出しさせませんでした。口出ししようものなら痛い目にあわされます。『減税すべきでは』などと進言しようものなら、『誰があなたを選んだの?』と返されたでしょう」