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資金調達

クラウドファンディングの「DREIM」モデルとは何か

2015年8月3日(月)19時00分
クリス・バッキンガム ※Dialogue Review Mar/May 2015より転載

最適なプラットフォームと競合を調べる

 わかりやすい例を挙げよう。最近私が手がけたクライアントのケースだ。ある技術者が、ユニークなアウトドア製品をつくるための機械設備の資金を集めようとしていた。彼の最初の相談は、この事業に「見返り」モデルが使えるかどうか、というものだった。彼は「株」モデルを使うことで、経営に関する決定権を失うことは避けたかった。

「利子」モデルも選択肢から外れた。彼の会社が取引を始めてまだ2年もたっておらず、通常の借り入れをするにはリスクがあったからだ。また、担保を入れるのにも抵抗があった。彼の会社は慈善団体でも非営利団体でもないため、「寄付」モデルも論外だった。

 他の選択肢を捨て、「見返り」モデルに絞り込んだら、次のステップは「見返り」タイプのサービスを提供しているプラットフォーム(ウェブサイト)を調べることだ。その際、候補となるプラットフォームで、他にどんなクラウドファンディングが行われているかを見てみる。調べる際のポイントは以下の通りだ。

・プラットフォーム上に似ているプロジェクトがあるか?
・それは成功しているか?
・ファンディングの期間はどれくらいか?
・いつスタートしたか?
・いくら調達しようとしているのか?
・見返りのギフトとして何を提供しているか?
・どんな手段を使っているか?(動画の掲載、更新の頻度、ソーシャルメディアの活用など)

 こうした情報をできるかぎり入手することで、プロジェクトが資金調達目標に達しやすいプラットフォームをいくつか絞り込むことができた。もちろん目標は、事業によってさまざまだ。きわめて少額(もっとも少なかったのは300ポンド〈約56,000円〉だった)なものもあれば、巨額(最高は160万ポンド〈約3億円〉)を狙うものもあった。

少なくとも8週間の準備期間が必要

 採用するモデルにかかわらず、クラウドファンディングがプラットフォーム上で行うべきことはほぼ共通している。以下のような取り組みだ。

動画:製品やプロジェクトのメンバーの紹介。
メインページでの売り込み:製品やプロジェクトメンバーを文章で紹介する。
保証:「見返り」モデルならばギフト、「株」モデルならば株式、「利子」モデルであれば適用される利子を示す。
更新:資金提供者からの質問とその回答、資金調達の進捗状況、資金提供者への感謝などの内容をひんぱんにアップデートする。

 これらの四つは、クラウドファンディングをスタートする前に、綿密に計画しておく必要がある。通常のパターンでは、少なくとも8週間は準備期間に当てた方がよい。クラウドファンディングでは、現時点では失敗する方が多い(おおよそ60%は失敗するという推計もある)。だからこそ、立ち上げる前にしっかりと計画と戦略を練っておくことが重要なのだ。

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