最新記事

テクノロジー

ハッカーは遠隔操作で車を暴走させられる

乗っ取り可能なことが明らかになって、自動車会社も対策に乗り出した

2015年7月23日(木)19時30分
コナー・ギャフィー

悪夢 突然コントロールを失ったら? Robert Galbraith--Reuters

 運転中に突然ラジオががなり、ワイパーが暴れてエアコンから冷風が吹き出し、ついにはエンスト......。

 ハッカーの手にかかれば、離れたところを走行中の自動車も簡単に乗っ取れることが実証実験で確認された。時速70マイル(時速約112キロ)で高速走行中のジープ・チェロキーを止めることもできたのだ。

 ジープを傘下に置くフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)はこの実験結果を受けて、新型のチェロキーとクライスラーに搭載されているインターフェイス、Uコネクトのセキュリティを強化、ユーザーにソフト更新を呼び掛けている。

 Uコネクトはダッシュボード中央のタッチパネルでカーナビやオーディオ、ハンズフリーフォンを操作できるシステム。そのセキュリティ上の弱点を突けば、アクセルやブレーキを遠隔操作できることが分かった。

 ワイアード誌によると、実験を行ったのはセキュリティ専門家のチャーリー・ミラーとクリス・バラセック。2人は昨年FCAに安全上のリスクについて警告し、FCAは今月16日に更新ソフトをリリースした。UコネクトはFCAが2013年末以降に製造した数十万台の車に搭載されているという。

 ミラーとバラセックは、15キロ以上も離れた地点から、チェロキーのファン、ラジオ、ワイパーを操作し、さらにはエンジンを止めた。車は交通量の多い高速道路上でいきなり失速した。

 こうした危険が明らかになったのは、今年2月にエドワード・マーキー上院議員(マサチューセッツ州選出・民主党)が、世界の自動車大手50社に対する調査に基づく報告書を出したのがきっかけだ。それによると、最近の車にはほぼ例外なく無線技術が導入されていてハッカーの標的になりかねないが、現在のセキュリティ対策は「驚くほど穴だらけで、不完全」だという。

 英シンクタンク・王立国際問題研究所のサイバーセキュリティの専門家、キャロライン・バイロンによると、車のハッキングはさまざまな犯罪に利用される可能性がある。「事故を起こして、ドライバーを殺害することも可能だ。データを盗むこともできる。車の電子機器に記録されたデータには重要な個人情報が含まれるため、被害も深刻になりかねない」

マルチメディア再生システムにも注意

 FCAは更新ソフトの配布に当たり、「車のシステムに対する許可なく不法なアクセスの潜在的なリスクを減らす」ためには、「スマートフォンやタブレット」と同様、ソフトを定期的に更新する必要があると説明した。必要ならFCAの技術者が無料で更新を行うという。

 電気自動車もサイバー攻撃に弱い。無線技術が採用されていなくても被害に遭う可能性はある。昨年、シンガポールで開催されたセキュリティ専門家の会議では、価格10万ドルのテスラSモデルも、6文字のパスワードを突き止めるだけでてロック解除ができるという報告があった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指

ビジネス

アングル:データセンター対応で化石燃料使用急増の恐

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中