インド新首相が掲げる「モディノミクス」の実力
総選挙は最大野党の圧勝でモディ首相が誕生。その名高い経済手腕は国政でも通用するか
改革はできるか モディはサリーの生地のデザインになるほど人気だが…… Danish Siddiqui-Reuters
インドの総選挙は先週末に開票が行われ、次期首相の座に就くのは右派の最大野党・インド人民党(BJP)を率いるナレンドラ・モディが確実になった。
3月に地元紙に掲載された調査によれば、総選挙の最大の争点は経済成長だった。インドの人口の半数以上は26歳未満だが、このところのGDP成長率は5%で頭打ち状態にあり、中央銀行はインフレも抑制できずにいた。モディ人気の背景には、停滞する経済への失望感や、左派の現連立政権が経済を再生できないことに対する怒りがある。
そんななか、モディが首相を務めてきた西部グジャラート州は高い経済成長を遂げており、モディには「行政の魔術師」のイメージがある。強い指導力で州のインフラを整備し、自動車のフォードや衛生用品のコルゲートといった世界的大企業の投資を呼び込んだ。世界最大の石油精製所もあり、農業も主要産業だ。これこそ、モディが首相となったら全国に導入を公約する「グジャラートモデル」だ。
モディの経済手腕は、世界からも評価されてきた。ゴールドマン・サックスは昨年の報告書で、モディを次期首相として最も適任だと称賛した。
だが「モディノミクス」と呼ばれるモディの経済政策は、厳しい目で見ればすぐにほころびが見える。例えば、グジャラートはモディがいなくても同じように繁栄していたのではないかという問いを投げ掛けてみたら──答えはおそらく、イエスなのだ。
具体性のない政策ばかり
グジャラート州は地理的に好条件に恵まれている。長い海岸線は輸出の拠点となり、広大な乾燥地帯は工場用地に最適だ。
長期的に見れば、グジャラートの成長率はモディが01年に州首相に就任する前から国を上回っていた。90年代には国の成長率が3.7%だったのに対し、グジャラートは4.8%。00年代は5.6%に対して6.9%だった。この程度なら、グジャラートはどうしてもっと成長できなかったのか、という疑問のほうがふさわしいだろう。