最新記事

貿易自由化

オバマのTPP交渉に立ちはだかる米議会

2014年1月30日(木)14時11分
ジョン・バーウェイ(アメリカン・エンタープライズ研究所)

 日本では農業団体からの反対が根強いが、それでも安倍政権は意欲を失っていないようだ。しかし昨年末の世論調査によれば、TPP支持33%に対して不支持は36%だった。マレーシア政府は、マレー系を優遇する国内法「ブミプトラ」に抵触するとして、国有企業規制の受け入れに消極的だ。昨年10月のケリー米国務長官訪問時にも反対集会が開かれた。

 だが、TPPの受け入れが最も難しそうなのはアメリカだ。「自由貿易派の共和党」対「保護主義の民主党」という在来の構図は崩れ、今や乱戦状態。両党とも、自由貿易嫌いの労働組合や環境団体による反対運動の行方を慎重に見守っている。

 昨年夏には下院共和党の新人議員35人が通商代表部のフロマン代表に書簡を送り、TPPとTPAへの支持を表明した。

 しかし11月半ばには、労組の影響力が強い地域から選出の共和党議員たちがオバマ嫌いのティーパーティー派と組んでTPA反対を表明。これに下院民主党議員151人が同調する事態となった。一方で下院歳入委員会に属する民主党のレビン議員が独自のTPA案を準備しているのも、議会内で意見が割れていることの証しだろう。

 総合すると、オバマ政権の貿易政策に最も強く反対しているのは民主党議員や伝統的支持基盤である労組だ。だからTPAを手に入れるには共和党の協力を仰ぐしかない。果たして必要な賛成票を集められるか。政権の本気度が試されるところだ。

From GlobalPost.com特約

[2014年1月28日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア製造業PMI、3月は48.2 約3年ぶり大幅

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会

ビジネス

欧州株ETFへの資金流入、過去最高 不透明感強まる

ワールド

カナダ製造業PMI、3月は1年3カ月ぶり低水準 貿
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中