最新記事

航空機

ボーイングこけてエアバスほくそ笑む

皮肉な運命のいたずらで、787はA350のテスト機のような役回りになった

2013年2月1日(金)14時36分
クライブ・アービング

敵失に学ぶ エアバスが開発中のA350型機はボーイング787と同じ中型機 Jean-Philippe Arles-Reuters

 エアバスのファブリス・ブレジエCEOは先週、新型中型機のトラブルに直面した米ボーイング社の窮地に付け込んでいると思われないように細心の注意を払って記者会見に臨んだ。

「ボーイングもエアバスも、同じように安全を優先している」とブレジエは語った。「それが最も重要なことだ」

 そのとおり。航空機メーカーは、新型機には予想外のトラブが付き物だということを知っている。エアバスの新鋭の超大型機A380も翼やエンジンのトラブルに見舞われた。

 それでも、エアバスはボーイング787型機の運航停止で得をするだろう。エアバスが787の対抗機として開発中の中型機A350は、今年の夏に初飛行が予定されている。

 皮肉な運命のいたずらで787は、ある意味A350のテスト機のような立場になった。ボーイング社は多くの新技術を787に組み込むことで未知の領域に分け入り、完成が3年以上遅れた。それは中型機の分野で後を追うエアバスに時間の余裕を与えるとともに、すべきでないことを示すことにもなった。

 A350は電力供給をバッテリーに依存するボーイング機とは異なり、多くの重要なシステムに関して2基の主エンジンからの電力を使用する仕組みになっている。だがA350の電気システムの一部には、ボストンで起きた787型機の発火事件で問題になったリチウムイオン電池が使われている。

 ブレジエはこれについて「A350はまだ開発段階なので、変更は可能だ。だが電気系統について変更の必要があるとは考えていない」と語った。

 ボーイングは787型機の不具合の解消に向けて全力を注いでいる。監督機関による承認が得られなければ、運航再開は遅れるだろう。そして運航停止と新型機の供給遅延に直面させられた航空会社からの不満の声は、さらに大きくなる。

 今回のトラブルはボーイングにとって大きな痛手になるかもしれない。同社は787型機とより大型の777型機の改良版で、A350を迎え撃とうとしていた。だが今やそんな余裕はなくなった。

 787型機の運航停止に関して記者会見で慎重な表現を選んだエアバスのブレジエCEOの誠実さは疑う余地がない。だがボーイング社との競争の行方について、彼は数週間前よりほんの少し自信を付けたはずだ。

[2013年1月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英企業信頼感、第4四半期は2年ぶり低水準 税制懸念

ワールド

EXCLUSIVE-シリア中銀新総裁、金融政策の独

ビジネス

来週の決定会合で利上げ行うか議論=植田日銀総裁

ビジネス

マネーストックM3、12月は0.8%増 4カ月ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン」がSNSで大反響...ヘンリー王子の「大惨敗ぶり」が際立つ結果に
  • 4
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 5
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 6
    日鉄はUSスチール買収禁止に対して正々堂々、訴訟で…
  • 7
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 8
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローン…
  • 9
    トランスジェンダーを抹消か...トランプ政権、気候変…
  • 10
    LA史上最悪の山火事が招いた、ハリウッド映画のよう…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 6
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 7
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 8
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 9
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中