市場が恐れるフランスの「ギリシャ化」
緊縮財政策はただの時間稼ぎ?
投資家たちをなだめようと、サルコジ政権は2つの財政緊縮策に踏み切った。しかしOECD(経済協力開発機構)によれば、国家債務がほぼ2兆ドル相当に上るにもかかわらず、緊縮策による節減額は2012年末まででわずか257億ドルにすぎないという。
飲食店への付加価値税引き上げ、たばこと清涼飲料への課税を柱とする緊縮財政策には、投資家を納得させられるだけのビジョンと規模が欠けている。
「フランスにはトリプルAを守るための長期戦略がある、と思わせるだけの迫力がない」とナティクシス銀行のシルバン・ブルワイエは言う。「今回の緊縮策は経済成長に悪影響を与えることはないだろうが、時間稼ぎにすぎない」
フランスは現在の危機を、経済成長の鈍化や若者の失業、格差拡大などの問題を解決するチャンスに変えることが可能だとみる向きもある。フランスは自国の経済モデルが活力を失いつつあることを認識しており、エコノミストらはスウェーデンやドイツの成功例を参考にしようとしている。
国家格付けに詳しいコンサルタントのノルベール・ガイヤールは、スウェーデンは90年代に何度か格付けを引き下げられた後、福祉制度の改革に成功したと指摘する。
とはいえ、フランスの政治家たちはまだ「改革のチャンス」をつかめていない。
「政党や(来年の)大統領選の候補たちはまだ、いま起こっている変化を受け止め切れていない」とガイヤールは言う。「彼らは投資家の心理がいかに変わりやすいかを理解していない。彼らが状況を把握するのは、まだ先のことだろう」
しかし、持続可能なシステムをつくるチャンスは「いま」目の前にある。後になってチャンスをつかもうとしても、もう手遅れかもしれない。
[2011年12月14日号掲載]