市場が恐れるフランスの「ギリシャ化」
「格下げ」危機に揺れるフランスだが、今のままでは「転落のスパイラル」から脱するのは難しい
追い詰められて サルコジ(左)はメルケルの態度軟化を心待ちに? Thierry Roge-Reuters
11月23日、ドイツの10年物国債の入札で金融機関の応札額が募集額を下回る「札割れ」が起きた。その後、日米欧の中央銀行が銀行に貸し出すドル資金の金利引き下げで協調すると発表。市場にはひとまず安心感が広がったものの、近いうちにユーロの「苦悩」が一掃される可能性は低そうだ。
皮肉なことに、多くのヨーロッパ人はドイツの札割れのニュースを聞いて前途に希望を見いだした。これでようやくドイツも思いやりの気持ちを持ってくれる、というわけだ。
何しろドイツのアンゲラ・メルケル首相は「堅物」だ。ユーロ危機に厳しい姿勢で臨み、危機の拡大を防ぐ策を練るより浪費国家に罰を加えたいのではないかと思えるような態度を取ってきた。
しかし、24日にフランスのニコラ・サルコジ大統領、イタリアのマリオ・モンティ首相との会談を終えたメルケルは、これまでの姿勢を変えない意向を明言した。ドイツの「思いやり」は当面、諦めるしかなさそうだ。
フランス経済の健全性はスペイン以下
フランスも、やきもきしていることだろう。格付け機関は、フランス国債に対するトリプルAの評価も安泰ではないと警告。フィッチ・レーティングスはフランスについて、国家財政への新たな衝撃を吸収できる余力は限られていると指摘した。
投資家はフランス国債を敬遠する態度を強め、同国の借り入れコストは上昇し始めている。
エコノミストたちが恐れているのはフランスの「ギリシャ化」──政府の借り入れコストが上昇し、債務返済がより困難になること。その結果、経済が弱体化して投資が減り、景気低迷と失業率の上昇を招くという悪循環だ。
そんなフランスの運命を握っているのが、欧州中央銀行(ECB)で事実上の拒否権を持つドイツだ。ECBはユーロ圏17カ国の政府への直接貸し出しを禁じられている。浪費好きの政治家に利用されないようにするためだ。
その方針を変えるにはドイツの同意が必要。だがドイツは、フランスなど危機に瀕した国々について、ECBから緊急援助を受けるより経済改革を行うべきだと主張している。
それも一理ある。シンクタンクのリスボン評議会による最近の報告によれば、フランスの総合的な経済の健全性は、失業率が21・5%に達するスペインよりも評価が低い。不相応に大きい政府支出と競争力の低さ、若者の高失業率がその理由だ。