TPPアメリカの本音と思惑
「特別扱いは認めない」
アメリカには国内産業界からの突き上げもある。ようやく太平洋地域に外交の焦点をシフトしたものの、気が付けばアメリカはアジア諸国とのFTA締結で後れを取っていた。
「その結果、米企業は低関税やゼロ関税の適用を受けられず、アジア貿易でますます不利な立場に置かれている」と言うのは、米国務省とUSTR(米通商代表部)の元アジア専門家ブライアン・クラインだ。「1つの商品がさまざまな製造工程を経るなかで、(関税率が)1%違うだけでも価格競争力に大きな影響を与える」
「交渉に譲歩は付き物だ」と、クラインは続ける。「この種の交渉で柔軟に対応しやすい領域は、国内法の実施時期や関税率の引き下げ時期だろう」
しかし「レベルの高い」協定ではその柔軟性にも限界がある。米政府としては、既存のFTA(例えばシンガポールとのFTA)よりも条件を緩和することは難しいだろう。
実際、米政府のTPP推進派の間では、日本が参加すれば交渉の進捗が遅れ、TPPの最終的な効果が薄まると懸念する声がある。例えば日本が農業などの領域で例外扱いを求めれば、他の交渉国からも同様の扱いを求める声が噴出する。
こうした懸念についてトム・ドノヒュー米商工会議所(USCC)会頭は「この交渉にお子様用のテーブルはない」として、特別扱いを認めるべきでないと主張している。それが嫌なら日本をTPP交渉から完全に外したほうがましだと、アメリカのTPP推進派は思うはずだ。
そうなれば、日本は中国と同じように、事の成り行きを指をくわえて見ているしかない。
[2011年11月30日号掲載]