最新記事

中東経済

ドバイ危機、トンデモ後遺症の実態

09年の信用危機は乗り越えたと思ったら大間違い。個人の負債額は危険なレベルに膨れ上がっている

2011年7月5日(火)17時08分
ジョン・ジェンセン

警察から脅迫も? UAE住民が金を返せないと株価にも影響しかねない Jumanah El-Heloueh-Reuters

 09年のドバイ・ショックから立ち直りつつあるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。09年11月に政府系持株会社ドバイ・ワールドが債務返済繰り延べを要請したのを機に信用不安が高まり投資家が一気に引き上げたが、あれから徐々に経済活動は回復しているようだ。

 しかしUAE住民ひとりひとりの財布に目を向けると、個人の負債額が膨れ上がっているいことが、最新の調査で分かった。クレジットカードの支払いから自動車ローンまで、その額は驚くほど大きい。

 ドバイに拠点を置くニュースサイト「アラビアン・ビジネス」が行った調査によると、UAE住民の25%以上が、6万8000ドル以上の個人負債を抱えている。2万7000ドルから5万4000ドルの負債を抱えている割合は、40%にも上る。

金ピカ国家の浪費癖

 この調査結果がUAEの現状すべてを正確に表しているとは言えないかもしれない。だがオイルマネー大国UAEの「後先を考えない消費文化」の一側面を示しているのは確かだろう。

 調査によれば、
●UAE住民の12%がクレジットカードを7枚以上持っている
●住民の25%近くが2万7000ドル以上の負債を抱えている
●負債を抱える人々の20%が自分の借金の総額を把握していない

 この調査結果で一番驚かされるのは、借金を抱える人々の大半(80%)が、警察から返済について「脅迫電話」を受けていると答えたことだ。

 調査のサンプル数は非常に少なく、対象者がどんな人たちか(UAE国民か外国人居住者か)は明らかになっていない。UAEの人口、約400万人のうちUAE国民はわずか25%。残りはUAEで働く外国人で、彼らは母国への納税が免除されている場合が多い。

 ドバイの景気が急速に傾き始めた09年、こうした外国人の多くが解雇され、派手な高級車を残して出国していった。ドバイの空港の駐車場にキーが付いたまま残された車のローンはまだ返済されていなかった。

 09年2月のニューヨーク・タイムズの記事はこう伝えている。


 ドバイの経済状況が悪化するなか、地元紙によれば3000台以上の車が空港の駐車場に放棄されている。借金がかさんで逃亡した外国人の車だ(支払いが滞ると逮捕されることもある)。車内には使用限度を超えたクレジットカードが残され、フロントガラスに謝罪文が張ってある車もあるという。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め

ワールド

プーチン氏「ハリコフ制圧は計画にない」、軍事作戦は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中