ノルマ果たせ!中国の無謀な省エネ作戦
年末までのエネルギー削減目標を達成するためスクランブルをかけた中国政府の奥の手は、何と停電
やることが極端 ディーゼル油を求めるトラック運転手(11月、四川省) Reuters★
ガソリンスタンドではディーゼル油が不足し、工場は操業停止に追い込まれ、家庭の電気が突然消える――信じがたいことだが、こんなことが中国の一部で実際に起きている。それも政府の政策が原因で。中国政府が今年で最後の年を迎える5カ年計画のエネルギー強度(GDP1単位当たりのエネルギー消費量)の削減目標を達成しようと、ラストスパートに乗り出したためだ。
中国政府は05年、2010年までにエネルギー強度を20%削減すると宣言した。燃料をしこたま使う工場や非効率的な石炭火力発電所、小さなセメント工場を閉鎖したことは大きな成果だったと、北京のWWF(世界自然保護基金)で気候変動を専門とする王濤(ワン・タオ)は指摘する。ただし、それも08年秋に金融危機が起きるまでのことだった。
「残念なことに、その後は政府の景気刺激策の多くがインフラ整備、特に鋼鉄業やセメント産業のようなエネルギーを食う重工業に充てられた。その結果、エネルギー強度を減らそうという流れが逆行し始めた」と、王は言う。
「余剰電力提供」の優等生工場まで停電に
今年に入ってメキシコのカンクンで開かれたCOP16が迫ると、中国政府は削減目標を達成するため倍の努力をせよと呼びかけ始めた。すると多くの中国各地の地方政府が部下の役人たちにエネルギー消費量を割り当て、上限を超えたら解雇すると警告。そこで多くの役人たちは、単に電力供給を止めるという行動に走った。河南省では製鉄工場が何日間も閉鎖を言い渡され、町や村の家庭で電気が止まった。
ほかの地域では信号機や病院までが電気を止められた。こうした措置が住民やビジネスマンを怒らせたのは言うまでもない。「われわれの広東省の工場が突然、地方政府から製造停止を命令された」と、中国南部で繊維製品を調達しているペルー系スペイン人のグスタボ・サリナスは言う。「電力の使い過ぎということは全くない。この工場は、中国の電力網に余分の電力を供給していたんだから!」
WWFの王によると、「奇妙でばかげた」このような政策が生み出すマイナス効果はこれにとどまらない。エネルギー規制の結果、セメント価格は史上最高レベルにまで高騰した(これは中国の最近のインフレとも関係がある)。