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アメリカ経済

失業給付と金持ち減税、究極の選択

2010年12月3日(金)18時26分
アニー・ラウリー

延長打ち切りで成長率は0.4ポイント低下

 しかし彼らの願いも、議会には届かない。共和党の上院議員たちは今週半ば、失業給付を1年間再延長するという民主党の要求をはねつけた。給付金延長に関わる法案を上院で通過させるには、民主党は共和党議員2人から支持票を勝ち取り、共和党の議事妨害を打破しなければならない。

 民主党は、失業保険の給付延長と富裕層への減税を抱き合わせにできれば、と考えている。共和党は、年末で期限が切れる「ブッシュ減税」の延長とともに給付延長に賛成するか、それとも国民が等しく増税を受け入れるかの選択を迫られる。それでも給付延長は審議されず、給付期間は26週間になる可能性が高いのが現状だ。

「緊縮クリスマス」が過ぎたら、来年はどうなるのか? 今年の5月末から2カ月間、財政赤字をめぐる議会の対立で250万人の失業給付が失効した。ここで支払われなかった給付金100億ドルは10万人の雇用創出につながるはずだったと、国家経済会議のローレンス・サマーズ委員長は指摘している。議会の両院合同経済委員会によると、その損失は来年には10倍になりかねないという。

「失業保険の給付延長を拙速に終わらせれば消費支出に影響を及ぼし、800億ドルの経済的損失をもたらす。その結果、来年は100万人以上の雇用が失われる」と、両院合同経済委員会の報告書は述べている。さらに2010年12月〜11年2月で、経済成長率は0.4ポイント下がるという。つまり失業保険の給付期間が延長されなければ、おぼつかない景気回復はさらに足元をすくわれるということだ。

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