最新記事

中国経済

米金融緩和で中国に増殖する「海豚族」

2010年11月18日(木)17時38分
ジョナサン・アダムズ

さらなる世界的危機が訪れる?

 日本も韓国も台湾も、投機資金の流入に対処し、自国通貨の相場を低く抑えようと必死だ。「4カ国・地域の中央銀行は、外国からの投機資金への対応に追われている。あらゆる手を使って対応しようとするだろう」と殷は言う。

 それはつまり、各国の中銀が大規模な介入も辞さないということだ。台湾の中銀は毎日のように大規模な台湾ドル売り介入を行っている。おかげで世界第4位の外貨準備(3800億ドル超)はさらに増加しつつある。

 台湾と韓国は短期の投機をやりにくくするための資本規制にも乗り出した。日本も大量の円売り介入を行なう用意が出来ている。

 そして中国は従来の為替政策を今後も踏襲するだろう。実際、市場介入はさらに拡大すると見られているし、利上げがさらなる投機資金を呼び込めば、外貨準備高は今の2兆6500億ドルからさらに膨らむ見通しだ。

 つまりバラク・オバマ米大統領やアメリカ寄りのIMF(国際通貨基金)が何と言おうと、中国は人民元を切り上げてアメリカを喜ばせる気は毛頭ないということだ。

 為替相場をめぐる米中の対立について、エコノミストの謝国忠(シエ・クオチョン)は非常に悲観的な見方をしている。彼は先ごろ「チャイナ・インターナショナル・ビジネス」誌上で、自国通貨を安く誘導しようとする政策の応酬は世界経済に大きな損害をもたらしていると警告した。

「世界は高インフレと政治的不安定へと向かっており、さらなる世界的危機が訪れるのは時間の問題だ」

 私たちは通貨戦争のまっただ中にいるということか。イルカ族の増加はまだ始まりに過ぎない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ロシアの正しい対応に期待」、ウクライナ

ワールド

在日米軍駐留費の負担増、日本に要請の必要=グラス駐

ビジネス

金現物が最高値更新、トランプ関税巡る懸念や米利下げ

ワールド

プーチン氏、停戦巡る米提案に同意 「根源要因」排除
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中