世界経済の命運は中国の手に
各国首脳が集まって何を話し合っても、中国が態度を改めないかぎり景気回復は見込めない
中国頼み 胡錦濤・国家主席は人民元改革と内需拡大に応じるか Tim Chong-Reuters
世界経済の「バランスを取り戻す」のは、理屈の上は単純な話だ。経済危機以前の世界では、アメリカを中心とする一部の先進国がカネを浪費する一方、中国を中心とする一部の途上国はカネを貯めこみすぎていた。浪費国は巨額の貿易赤字を出し、貯蓄国は巨額の貿易黒字を出すという形で、両陣営は互いに補い合ってきた。
だが経済危機を境に浪費国の消費が冷え込むと、事態は一変。資金を貯め込んでいる国がもっとカネを使うようにならなければ、世界経済は長期的な景気低迷に陥る。為替レートや補助金、関税を操作することで、各国は弱い需要の食い合いをするかもしれない──。
これが、「通貨戦争」や保護主義、経済的ナショナリズムなどと称される最近の経済的衝突の一般的な形だ。先進国が失業率の高さに苦しむなか(アメリカは9・6%、フランスは10・1%、スペインは20・5%)、各国が国内経済や国内の雇用を守る政策を拒むのは一段と難しくなるだろう。諸外国が同じように国内優先の態度を取るなら、なおさらその傾向は強まるだろう。このシナリオを回避することが、11月11〜12日にソウルで開かれる世界20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の中心課題となる。
もっとも現実には、世界経済がバランスを取り戻せるかどうかは、「中国は変わるのか」という一点にかかっている。
世界第2位の経済大国となった中国は長年、重商主義的な(つまり自国の輸出産業を優遇する差別的な)経済政策を取ってきた。おかげで膨大な貿易黒字が生まれ、雇用が劇的に拡大。世界中が好景気に沸いている間は、中国のそうした姿勢も大目に見られてきた。
実際、2007年には貿易黒字を中心とする中国の経常黒字は、GDP(国内総生産)の11%に達していた。