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中間選挙は歴史的に株価上昇要因

共和党勝利による「ねじれ議会」もオバマの政策よりはいいとマーケットは考えているが、期待通りに株価は上がるか

2010年11月2日(火)18時06分
アニー・ロウリー

議会は邪魔者 機能しないでくれるほうがまし、というのがウォール街の常識 Brendan McDermid-Reuters

 11月2日の中間選挙でアメリカはほぼ確実に、下院を共和党、上院を民主党が支配する「ねじれ」状態に突入する。大統領の所属政党と一方、または両議会の与党が異なる「分割政府」状態に陥ると、法案の審議は行き詰まり、地球温暖化対策や税制改革、移民法改正をはじめとする数多くの変革が頓挫する可能性が高い。

 だが、ワシントンの手詰まり状態がウォール街のカンフル剤になることはめずらしくない。大富豪投資家のケネス・フィッシャーは金融情報メディア、ブルームバーグの取材に対し、「市場は膠着状態を好む」とコメントし、中間選挙の投票日前後に株式市場が高騰すると予言した。「市場が望むのは現状維持だ。税制や財政支出、規制、財産権に変化をもたらす法改正は少ないほどいい」

 政治が市場にどう影響するかというテーマは、株式アナリストが好みそうな話題だ。市場はねじれ議会を好感するというのが、彼らの常識。法案審議が滞るため、企業にとっては法規制がらみの不確定要素が少ないのだ。

 この理屈で言えば、小さな政府に賛成ならば、ねじれ議会のせいで身動きの取れない分裂政府はもっと有難い存在ということになる。しかし最近の研究によって、実態はもっと複雑であることがわかってきた。実際、ウォール街でも、ねじれ議会の誕生を下げ相場の兆しとみなす声も出はじめている。

中間選挙が終わると株価が上がる

 確かなことが一つある。市場は中間選挙が大好きだということだ。

 米証券会社フィナンシャル・ネットワークのブライアン・ジェンドローが1922年〜2006年の中間選挙後の株価の推移を調べたところ、22回中19回でダウ平均が上昇していた。中間選挙が行われた年には選挙後の90取引日でダウが平均8・5%上昇したが、中間選挙が行われない年には3・6%だった。

 その原因について、ジェンドローは2つの仮説を立てた。1つ目は、中間選挙によって民主党と共和党の権力が一段と均衡化し、法改正が進まないことを市場は歓迎するから、というものだ。

 もう1つの仮説は、不確実性と関係する。中間選挙前には、市場は議会が何を優先するのか予想しにくいが、選挙が終われば確実性が増す。要は、投資家の懸念材料が減り、株価が上昇するのだ。

 つまり、中間選挙そのものに、株式相場を押し上げる効果があるわけだ。では、選挙後の政治情勢──今回の場合はねじれ議会による政治の膠着──が株価に与える影響は?

 研究の結果、ウォール街での認識に反して、政治の膠着は株価にさほどプラスにならないことがわかってきた。米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)の主任投資ストラテジスト、サム・ストーバルによれば、ねじれ議会は市場にマイナスに働く。とりわけ、共和党が優勢の下院と民主党が優勢の上院、そしてホワイトハウスの民主党政権という組み合わせは最悪だという。

ねじれ議会で市場の不確実性が増す

 ストーバルは、1900年から現在までのS&P500社株価指数の構成企業の株価を3つのケースに分けて検証した。両議会とホワイトハウスを一つの政党が支配する「正常」期、一つの政党が両議会を支配し、別の政党がホワイトハウスを支配する「部分的なねじれ」期、そして下院と上院で与党が異なる「完全なねじれ」期の3つだ。

 111年間すべてを平均するとS&P500社株価指数は年率6・8%のペースで上昇しており、そのうちの67年間にあたる正常期には年率7・6%、部分的なねじれ期の32年間では6・8%の割合で伸びていた。これに対して、完全なねじれ期の12年間では年2%しか上昇していない。

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