最新記事

テクノロジー

かつてウォークマンは革命だった

2010年10月26日(火)17時55分
フレッド・カプラン

ユーザーの選択革命がiPodにつながった

 ウォークマン以前にも、携帯型の音楽プレーヤーがなかったわけではない。だが、イヤフォンつきのトランジスタラジオで聞けるのはDJの選んだ曲だけ。ラジカセを持ち運ぶことも可能だったが、周囲の人すべてに否応なく聞こえてしまうのが難点だった。その点、ポケットに入るほど小さくて軽いウォークマンなら、他人に気兼ねすることなく自分が聞きたい曲だけを聞ける。

 ウォークマンを機に、各自が欲しいコンテンツを欲しいときに入手するポップカルチャーの時代が幕を開けた。その後、50チャンネルのケーブルテレビ(すぐに500チャンネルに増えた)や、好みの番組を自動的に録画するデジタルビデオレコーダー「ティーボ」、オンラインDVDレンタルのネットフリックスなど好みのコンテンツを自由に選ぶための技術が続々と開発された。

「ユーザーの選択革命」とも称されるこうした商品の市場は、新製品が出るたびに広がり、深化してきた。79~99年の20年間のウォークマンの販売台数は1億台。一方、2001年以降の9年間ではアップルのiPodが2億7700万台売れている。

 ウォークマンが登場した30年前を知らない若者世代は、当時の人々が感じた不思議さをイメージしにくいかもしれない。1981年にマネー誌に掲載された友人への手紙形式の記事を見てみよう。

「先月ニューヨークに来たとき、小さな箱につながれたヘッドフォンを装着して、虚ろな目で歩き回る変人を見ただろう? 君が帰った後、周囲に尋ねてみたら、彼らはカルト集団の信者じゃないそうだ。あの小さな箱は携帯型のカセットテープ再生機だ。自宅にいなくても音楽を聞ける時代になったらしい」

 21世紀を生きる人の大半にとっては、私のように自宅でステレオを聞く人間のほうが「虚ろな目をした変人」に思えるのだろうが。

Slate.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

政策調整急がず、現状の金利は適切な水準=FRB副議

ワールド

OPECプラス8カ国、5月から日量41万バレル生産

ワールド

米関税措置で25年の世界貿易1%減、報復の連鎖を懸

ワールド

米関税「根拠ない」、欧州企業は対米投資中止を=仏大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中