スタバを出し抜いた「おうちカフェ」
一世を風靡した「ラテ」や「ヴェンティ」はもう落ち目。かつて熾烈を極めたコーヒー戦争の末の意外な勝者とは
問われるバリュー スターバックスもマクドナルドも負け組 Reuters
覚えているだろうか。スターバックスの客がエリート志向と言われ、ダンキンドーナツの常連は「ラテ」や「ヴェンティ」といった外国風の呼び名を皮肉り、マクドナルドのコーヒーが突如として高級に変身した、あの頃を。ありがたいことに、大手が火花を散らしたコーヒー戦争はいったん終息したようだ。でも結局、勝ったのは誰なのか?
それはバリスタでも、カフェイン漬けの常連客でもない。自宅で入れたカップ1杯のコーヒーを持って通勤する普通の人々だ。
コーヒー戦争の引き金になったのは、王者スターバックスの低迷だ。同社は09年、業績の振るわない米国内の600店舗を閉鎖。今年1月にはさらに300店舗を閉じ、7000人近い人員削減を行うことを発表した。
チャンスをかぎつけたマクドナルドやダンキンドーナツなど競合他社は、宣伝を強化して戦略も転換。マクドナルドはグルメ志向のコーヒー関連商品「マックカフェ」を売り出し、店舗もコーヒーカウンターやテレビ画面などを備えた内装に変え始めた。
09年9月の会計年度末までに、スターバックスの収益は6%近く低下。同一店内での売り上げは9%下落した。
かといって、マクドナルドの業績も芳しくない。収益はアメリカ国内外で7%下落。スターバックスのフラペチーノに対抗した「フラッペ」の売り上げが好調で、4〜6月期の収益は12%上昇したものの、コーヒーからはいくぶん重点を移し始めた。代わって、スムージー専門のチェーン店ジャンバ・ジュースを攻撃するかのように、この夏からスムージーの販売に乗り出したのだ。
ではコーヒーで収益を上げたのはいったい誰なのか? バーモント州に拠点を置くコーヒー卸売り大手のグリーン・マウンテン・コーヒー・ロースター(GMCR)に聞いてみるといい。同社はマクドナルドが店舗や広告に莫大な費用をつぎ込むのを喜んで眺めている。
家でコーヒー派が4%増加
グリーン・マウンテンは、家庭用コーヒーメーカー大手キューリグからライセンスを受けて販売するコーヒーメーカー用のカートリッジ「Kカップ」で大成功を収めた。オーガニックコーヒー販売ニューマンズ・オウンやタリーズ、カリブ・コーヒーなどのコーヒーチェーン大手とも提携を結び、過去3年間で毎年56%近い成長を遂げた。
結局、コーヒー好きは「コーヒー店品質の家庭用コーヒー」を選んだということだ。全米コーヒー協会の今年の消費動向調査によると、家でコーヒーをいれるというアメリカ人は86%で、前年から4%増加した。
同調査によれば、コーヒーを飲むアメリカ人のうち、経済的な理由でコーヒーの飲み方を変えたという人は16%。消費されるコーヒーのうち40%が高級コーヒーであることからも、自宅で高級コーヒーを飲む消費者がかなり多いことがうかがえる。コーヒー専門店から家庭用コーヒーへのシフトが起きているようだ。
ミネアポリスに拠点を置くカリブ・コーヒーの場合、09年は同一店舗での前年比売り上げが2・3%落ち込むなか、カートリッジのKカップを含む商品売り上げは42・4%に急増。こうした売り上げが総売り上げに占める割合も4%に拡大した。今年の4〜6月期も、商品売り上げの成長率(51%)が店内飲食の売り上げの成長率(4・4%)をはるかに上回った。
同じことがサンフランシスコに拠点を置くピーツ・コーヒー&ティーにもいえる。同社は192の店舗しか持たず、純売上高の35%近くを商品販売と宅配が占めている。09年の店内飲食の売り上げは7%増だったが、商品販売と宅配の売り上げはその倍近い成長を記録した。