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アメリカ経済年収25万ドルは金持ちじゃない?
「ブッシュ減税」の延長をめぐる議論で、年収25万ドル以上の世帯を除外するオバマ案に対して珍妙な反論が聞こえてくる
彼の「遺産」 ブッシュが01年、03年に実施した減税がオバマを苦しめる Kevin Lamarque-Reuters
ブッシュ前政権が暫定的に所得税などの税率を引き下げた「ブッシュ減税」。その期限切れを年末に控えて、アメリカでは期間延長をめぐる議論が沸騰している。
オバマ大統領は年収25万ドル以上の世帯を除き、減税を恒久化することを提案。だが共和党は減税の恩恵はすべての国民が受けるべきだとして、全面的な延長を求めている。さらに、年収25万ドル以上を対象に増税を行えば、雇用を創出できる中小企業経営者といった中間層に悪影響を及ぼすと主張する。
国民の間でも、彼らだけ減税を打ち切るのは恣意的で不公平だとする意見は多い。しかし01〜08年の財政政策の大失敗のせいで、ブッシュ減税の見直しは避けられないのが現状だ。
また、この話になるとよく聞こえてくるのが「年収25万ドルでは本当の金持ちとは言えない」という不満だ。確かに金持ちか貧乏かは気持ちの問題でもある。年収が300万ドルあっても不幸で金に困っていると感じる人もいれば、年収3万ドルで欲しいものはすべて手に入れたと感じる人もいる。それでも、年収25万ドルの人間が金持ちの部類に入ることだけは間違いない。08年金融危機以降は特にそうだろう。
米国勢局の08年調査によれば、国民の世帯収入の中間値は5万303ドルだ。07年から3・6%下落し、09年はさらなる下落が予想される。つまり25万ドルとは平均的なアメリカ人の年収の約5倍。08年には、年収25万ドル以上の世帯は約248万世帯で、全米の上位2・1%だけだった。
もちろん州ごとに異なる生活費も考慮しなければならないし、近所の投資銀行家のボーナスが200万ドルだと聞けば、自分は金持ちじゃないと考えたくなる気持ちも分かる。でもどんなに金持ちが集まる地域でも、25万ドルの年収があれば胸を張っていられるはずだ。