最新記事

ネット

サイバー攻撃、中国側のふるった言い分

グーグルに対する攻撃元が中国の学校と特定されたが、中国側は「誰かが乗っ取ってやったことかも」と反論

2010年2月24日(水)17時16分
クリス・トンプソン

人のせい 中国はセキュリティが遅れているから仕方ない?(安徽省合肥市のインターネットカフェ、今年1月) Reuters

 米政府の情報部門がグーグルに対するハッカー攻撃の発信源が中国の2つの学校であることを突き止め、ソフトウェアの開発者も特定した――英米メディアでの報道を受け、中国の国営新華社通信は否定にならない否定記事を掲載した。

 筆者のムー・シュエチュアンは中国政府がサイバー攻撃に一切関わっていない、とまでは主張していない。むしろムーはシンプルにこう伝えている。まだ何一つ確かな証拠はない、と。

 ムーはハッカーのIPアドレスが上海交通大学と山東藍翔高級技工学校のものだと特定されたにしても、それに何か意味があるとは必ずしも言えない、と主張している。何者かが遠隔操作でこの2校のコンピューターにアクセスし、両校を踏み台にグーグルにサイバー攻撃を仕掛けた可能性もある、というのだ。


 いまだにインターネットのセキュリティ技術やサービスが未発達なため、中国のコンピューターはハッカーに乗っ取られやすい。中国人のインターネットユーザーの大半もセキュリティ意識に欠け、十分な防御措置をとっていない。今回判明したハッカーのIPアドレスは、サイバー攻撃が中国人によって、あるいは中国国内から行われたというメディアの主張を裏付けるものではない。


 加えてムーは問題の2校が中国政府や人民解放軍と研究提携している学校であることを深読みしない方がいい、と述べている。どの国の政府にも官学連携の研究プロジェクトくらいある。それを言うなら、アメリカ政府などはサイバーセキュリティやハッキングの専門家までおおっぴらに雇っているではないか。
 

グーグルは中国と交渉再開?

 ムーの主張はこの問題に対する中国政府の主張に沿ったものだ。ハッキングは地球規模の問題で、中国もほかの国と同様に攻撃を受ける。グーグルの一件で怒りをぶつけるのではなく、サイバー世界の共通の敵に協力して立ち向かおうではないか。「効果的な監視と緊密な国際協力がサイバーセキュリティを向上させる道だ。互いを非難しあっても解決にならない」――というわけだ。

 その一方で、ウォールストリート・ジャーナル紙の報道によれば、旧正月休みが終わったあと、グーグルは以前に中国政府と交わした検閲協力は拒否しながらも、中国から撤退せずに居残る道を探るため、当局との話し合いを再開しようとしている。グーグルはこの報道へのコメントを拒否している。

*The Big Money特約
http://www.thebigmoney.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中