アメリカの雇用が年内に増え始める理由
一流企業でリストラが止まっていないことは事実だ。最近も、雑誌のタイム社やジョンソン・エンド・ジョンソン、マイクロソフトなどが人員削減を発表している。しかし、そもそも一流企業に雇用創出を期待すべきでない。コフマン財団の調査によれば、07年の雇用の純増数の3分の2近くは、創業して5年に満たない企業が生み出していた。
不景気は起業のビッグチャンス
新しい雇用をつくり出すのは、第2のグーグルを目指してシリコンバレーで他社のオフィスに居候して会社を立ち上げる若者や、メキシコ料理の全米チェーンを目指して小さなレストランを始める若者たちだ。
リオとオリバーのクレマー兄弟もそれを夢見ている。この20代の兄弟はこの不景気で職を失い、自分たちで事業を始めることを決意。ニューヨークのユニオンスクエアのそばに、「ドストロス・タケリア」というメキシコ料理店をオープンさせた。
「事業を始めるには最高のタイミングだった」と、リオは言う。「安い賃料でいい場所に店を借りやすい」
2人の店は、8人のフルタイムのスタッフと7人のパートタイムのスタッフを採用して10月末に開店。土に分解される食器や、廃材でつくった椅子を用い、鶏肉は地元産のものを仕入れるなど、まさに地球環境重視の時流にあったビジネスだ。
アメリカがようやく見え始めた景気回復の兆しを軌道に載せ、雇用不安を吹き飛ばせるかどうかは、クレマー兄弟のような意気盛んな起業家たちに掛かっている。