アメリカの雇用が年内に増え始める理由
データが物語る企業の行動パターンと、雇用創出を牽引するミニ起業家たちのパワー
起業家精神 新規雇用の3分の2近くは創業5年未満の企業が創出(ハリウッドで移動式のハンバーガー店を始めた女性) Mario Anzuoni-Reuters
月刊誌にホラー小説を連載している怪奇小説家さながらに、米労働統計局は毎月第1金曜日に、陰鬱な長編ストーリーの新しい章を披露する。11月6日に発表された統計によると、10月にアメリカの失業率は10.2%に上昇。被雇用者数は07年12月以降730万人減り、求人数1件当たりの失業者数はついに6.1人に達した(07年12月は1.71人だった)。
しかし最新の一部のデータを見ると、それほど遠くない将来に、雇用が増加し始める日がやって来そうだ。景気循環の段階ごとの企業の行動パターンを考えても、そう考えるのが理にかなう。
物事が好転するためには、その前に悪化のスピードが減速する必要がある。いまアメリカ経済はその段階にあると見ていい。08年12月~09年4月に減少した雇用が毎月平均64万5000人だったのに対して、労働統計局によれば10月に減った雇用は19万人にとどまっている。
「雇わない」経営はそろそろ限界
ほかにも明るいデータはある。09年第3四半期、アメリカ経済の生産性は年率換算で9.5%上昇した。この現象は、経営者が経済回復の兆しに対して疑心暗鬼になっていて、需要が増えても新たに社員を雇わず、既存の社員にたくさん働かせて対応しようとしていることの表れだ。
しかし、このやり方には限界がある。「何世紀にもわたる経済の動きを見れば分かるように、7%ないし9%というレベルの生産性アップは2~3四半期以上続かない」と、景気循環調査研究所(ニューヨーク)のラクシュマン・アチュタン所長は言う。「人々が持ちこたえられなくなる」
アメリカ経済の第3四半期の成長率は、年率換算で3.5%。第4四半期もこのペースが続けば、企業は新たに人を雇うしかなくなると、投資銀行MKMパートナーズのチーフエコノミスト、マイケル・ダーダは言う。「ひょっとすると、暮れまでには雇用が増加し始めるかもしれない」
農機具のジョン・ディーアや土木機械のキャタピラーなど、解雇した工場労働者の再雇用を開始した企業もある。転職斡旋会社のチャレンジャー・グレイ&クリスマスによれば、10月にアメリカ企業が採用を計画した従業員の数は合計5万7520人。1年前の8倍近い数字である。