焼け太りウォール街に金メッキ時代、再び
9月4~5日にロンドンで開かれた20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、意味のある成果は1つしかなかった。「業績回復が確か」になり次第、自己資本の増強などを行うようTBTFに呼び掛けたことだ。
だがこの要求にすら、金融機関は反発している。G20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明採択に合わせ、JPモルガンは報告書を発表。G20が提案した金融規制改革を実行すれば、ドイツ銀行やゴールドマン・サックスの投資銀行部門の収益性は最大3分の1低下しかねないと警告した。
一方、金融機関の報酬体系への批判は問題のすり替えにすぎない。政治家が報酬を問題にしたがるのは、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン会長兼CEO(最高経営責任者)が労働者層の2000倍もの収入を得ていることを知れば、誰もが衝撃を受けるから。とはいえ高額報酬は問題の原因ではなく兆候だ。
TBTFが巨額の報酬を支払うことができるのは、破綻の心配なしに高いリスクを取り、その高いリターンを総取りできるから。ゴールドマン・サックスが4~6月期決算で純利益34億3500万ドルと最高益を更新したのも、レバレッジを上げ、より高いリスクを冒したからにほかならない。
歴史に学び独占金融資本を解体せよ
いま必要なのは、金融機関の規制強化をめぐる政治家のリップサービスではない。金融サービス業界に独占禁止法を厳格に適用し、TBTFを一掃することだ。
とりわけ米政府は、FDICが保護するのは預金口座だけであること、債券保有者は今後保護の対象にならないことを言明する必要がある。言い換えれば、金融機関が破綻した場合、打撃を受けるのは納税者ではなく債権者でなければならないということだ。
こうした措置が現実化する見込みはあるのか。今のところ、そうは思えない。アメリカでは金融規制改革の機運が低下し、医療保険制度改革に関する論議が白熱している。そんななか、最も活発なロビー活動を展開し、最も多額の政治資金を提供している企業はどこか。TBTFだ。
だが現状が続けば、金融業界と政治家双方への反発が国民の間に広がる恐れは大きくなる一方だ。歴史を振り返っても、そうした例は1度ならずあった。
中央銀行的な機能も果たすべく1816年に設立された第2合衆国銀行は、「マネーパワー」を攻撃する政治運動の標的になった。アンドルー・ジャクソン第7代米大統領は再選を懸けた1832年の大統領選で、同銀行に対する有権者の反発を大いに利用した。
第2合衆国銀行のニコラス・ビドル総裁が1832年、米議会が同銀行に与えた公認の延長を申請すると、ジャクソンは拒否権を発動。4年後に公認期限は切れた。政府の後ろ盾を失った同銀行は1839年10月に支払いを停止。1841年、破綻した。
TBTFよ、覚悟せよ。現代のジャクソンよ、今こそアメリカはあなたを必要としている。
[2009年9月23日号掲載]