リーマン破綻1年後、本当の敗者
ウォール街は何も学んでいない
ウォール街を外から観察していれば、リーマン・ショックと同じ危機が再び起きる可能性が高いことは明らかだ。アメリカ政府はリーマンの経営破綻を認めた一方、リーマンと同じく不良債権をかかえ、同じくデリバティブ商品やサブプライムローンのような危険な投資に手を染めていた他社には救済の手を差し伸べた。
おかげでウォール街は「無敵のオーラ」を身につけたのではないかという懸念が高まっている。「あなたがウォール街のプレイヤーだとしよう。誰かが助けてくれるとわかっていれば、今のやり方を変えようとは思わないだろう」と、コロンビア大学経営大学院のアンドリュー・アング教授は言う。
経済危機勃発から1年が経った今も、アメリカ政府は金融危機の再発を防ぐ改革を十分に進めていない。議会は金融業界に(公的資金注入のおかげで利益を得ている企業に対してさえ)規制を課す法案を通していないし、幹部報酬は相変わらず高額だ。JPモルガン・チェースのように、公的資金を低金利で借り入れ、ハイリスクの投資をして記録的な利益を上げたケースもある。
「企業は教訓を学んでいないと思う。結局は丸儲けだったのだから」と、シカゴ大学経営大学院のルイジ・ジンガレス教授(経済学)は言う。「私がCEOでも、リスクを取らないではいられないだろう」
かつてのリーマン社員は、金融機関の破綻が二度と起きないでほしいと願いつつ、そうした希望が非現実的であることもわかっている。「私たちは程度の差こそあれ、過去にも同じ失敗を繰り返してきた。ドットコムバブルにS&L危機、そして今回はサブプライム危機だ」と、アムビンダーは言う。「今後20年間、別の危機が起きないとは思えない」
アムビンダーに言わせれば、危機が繰り返すのは人々が失敗を忘れるから。そのうえ、今回の金融危機を引き起こした張本人たちが引き続きウォール街にい続けるのだから、危機の再発は避けられそうにない。