グーグルのOS侵攻作戦
グーグルは7月7日、グーグル・アップスのメールや文書作成ソフトから「ベータ版」の表示を外した。試作版のイメージを脱して企業に採用を促すのが大きな狙いだ。シルバーは、マイクロソフトの優位は当面、揺らがないとみる。「経営トップがクローム搭載のネットブックを持ってきて、『これでメールを使いたい』と言う日が来るまで企業は動かない」
ネットブックの売り上げはパソコン全体のなかではまだごくわずかだが、業界では期待の星だ。ハイテク調査会社のアイサプライによると、パソコンの09年の世界出荷台数が全体では前年比9.5%減になるなか、ネットブックは68.5%増加する見込み。また今年のパソコン販売台数1億3400万台のうち、ネットブックは2200万台に達すると予測する。
「クラウド」を睨んだ攻防
アメリカでのネットブックやクロームOSの普及に1つ制約要因があるとすれば、無線でネット接続するためのインフラ整備が追いつかないことだ。「今の市場に欠けているのは、いつでもどこでもネットに接続できる環境だ」と、IT専門調査会社IDCのアナリスト、リチャード・シムは言う。
だがグーグルには、巨額のキャッシュと頭脳という強みがある。マイクロソフトと違ってユーザーにも好かれている。
何よりグーグルは、ユーザーのデータも応用ソフトもネットワーク上にあって、どこからでもアクセスできる機能分散型の「クラウド・コンピューティング」の未来に賭けている。一方のマイクロソフトは、すべての機能をパソコン内のOSと応用ソフトに集中させたパソコン依存型のモデルに利益の大半を依存する。
技術革新の大勢はグーグルが目指す未来に向っており、結果としてマイクロソフト的なパソコンの使い方が崩壊することも大いにあり得る。だが、爆弾に火が付くにはまだ時間がかかりそうだ。
[2009年7月22日号掲載]