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アメリカ経済公的資金を自社に「貸す」バンカメ
米不動産市場久々の大型融資は、450億ドルの公的資金注入を受けているバンカメの、バンカメによるバンカメのための自社ビル建設費!
裏切り 銀行救済への不信感がまた増幅しそうだ Shannon Stapleton-Reuters
凍り付いていた信用市場が動き出し、銀行は融資を再開し始めた。これは朗報だ。だが問題もある。貸し出し先が銀行自身ということだ。
金融危機で打撃を受けたバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)といくつかの金融機関は、ニューヨークのマンハッタンで建設中のバンカメ・タワーに、当初の建設費を上回る12.8億ドルの借り換え融資を行うことになった。ビジネスの中心のミッドタウンにあるこの超省エネビル(08年5月にオープンし、2010年に工事が完了する予定)は、バンカメと不動産開発会社ダースト・オーガニゼーションが折半出資で開発を進めてきた。
バンカメは借り換え融資の半分を負担。残りの半分は、資産運用会社バンク・オブ・ニューヨーク・メロンやウェルズ・ファーゴ銀行、西ドイツ不動産銀行、独ヘラバ銀行などが負担した。
昨年不動産市場の底が抜けてから初の大規模な不動産融資という点では心強い。州と市にも年間3000万ドルの税収をもたらし、そのほとんどが(ニューヨークの老朽化した公共交通機関を運営する)ニューヨーク都市交通局の財源になる予定だ。公共交通機関の整備支援とは、またまた喜ばしいことこの上ない。
銀行を救済した国民は家を失っているのに
問題は融資を受け取る側だ。バンカメは政府から約450億ドルの公的資金注入を受けているはずではなかったか。それがどうして何億ドルもの金を自分に貸せるのか。それも、あろうことかいちばん危うい不動産関連融資だ。財政監視団体「良識ある納税者の会」のスティーブ・エリスはこう語る。
信用市場が緩和し、銀行が融資を再開したのはいいことだ。だが多くのアメリカ人は、その融資先が銀行自身だとは夢にも思わないだろう。バンカメは、マンハッタンのすばらしいビルを建設するための借り換えを行ったが、バンカメの最大の出資者はアメリカ国民だ。その国民が自宅を失う危機に瀕しているのに、公的資金で救われた者が自らに貸し付けを行う。これは公的資金注入の大義に反している。
だが好意的な解釈はできないだろうか。公的資金を返済するために必要な投資ではないのか?
明るい展望はほとんどない。(オフィスビルの収益性を語る上でいちばん重要な)空室率の見通しさえまだ把握していないようだ。こんな金があるなら本当に、全米の商業、住宅部門に投資してほしかった。
怒りの度合いはどれほどか。
人は、自家用ジェットや贅沢なバカンスなど目に見える浪費に敏感だ。今度の件では巨額の金が動いている上、融資側の金融機関は不良資産救済プログラム(TARP)から公的資金を受けている。彼らは最初に公的資金の注入を受けた大手9行に名を連ねており、その銀行が、9行中で支援を受けた回数が最も多いバンカメにお金を貸している。怒りもいっそう増幅するだろう。