最新記事
為替ドルを狙い撃つ中国の不安と野心
通貨スワップ協定や人民元建ての貿易金融で、ドル依存からの脱却を図りたいが
自信の表れ 人民元建て貿易金融を検討していると発言した中国建設銀行の郭樹清会長(2009年3月) Bobby Yip-Reuters
基軸通貨問題に関するさまざまな憶測が飛び交っている。中国四大商業銀行の一つである中国建設銀行の郭樹清(クオ・シューチン)会長が8日、英フィナンシャル・タイムズ紙の取材に対し、同行が人民元建ての貿易金融を検討していると発言したためだ。人民元建ての貿易決済の拡大にも直結する。
中国政府はすでに南米やアジア、その他の新興市場国と2国間通貨スワップ(交換)協定を結んでいる。フィナンシャル・タイムズは郭のこの発言の背景には、米ドルに対する不信感があるとした。中国はドルの安定性に不安を感じ、人民元をもっと国際的に通用する通貨にしたがっている。
中国政府のドルに対する「懸念」は一面としては真実だが、「中国は今や先進国から意見されるだけでなく、各国に対してアドバイスできる立場にある」ことを示す政治的なポーズでもある。アルゼンチンや韓国のような国との通貨スワップ協定は、一定のレートで互いの通貨を交換できるようにすることで、相手国が中国製品を輸入しやすくする効果がある。
基軸通貨ドルは当分動かない
もう一つ覚えておくべきなのは、向こう何年かの間ドルの立場が弱まるのは避けられないが、どんな通貨もすぐにはドルに代わる基軸通貨にはなりえないということ。IMF(国際通貨基金)のデータによれば、2008年末時点で米ドルはいまだ世界の外貨準備の64%を占める。確かに08年9月末の64・4%と比べれば減ったが、下落幅はごくわずか。世界中の中央銀行が外貨準備を米ドルから2番目に多いユーロに毎年1%ずつ切り替えても、ドルとユーロが同等になるには30年かかる。
結局のところ、貿易決済で人民元が使われることと、ドルが基軸通貨でなくなることは別問題なのだ。