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欧州経済

単一通貨ユーロが崩壊?

世界不況でユーロ破綻が噂されても、加盟国の成長見通しが明るい理由

2009年4月7日(火)15時11分
ホルガー・シュミーディング(バンク・オブ・アメリカ欧州担当主任エコノミスト)

 欧州単一通貨ユーロの廃止──そんなことがありうるだろうか。

 世界規模の景気後退が深刻の度を増すなか、投資家たちは不安をつのらせている。単一通貨というヨーロッパで最も野心的な地域統合プロジェクトが不況のために破綻するのではないか、と。

 ユーロ圏経済がアメリカやイギリスと同じペースで減速しているという事実が、その不安に拍車をかけている。だがユーロが完全に破綻するというのは、考えすぎなように思える。

 ユーロ圏経済が不調な主な要因は外的なものだ。景気の先行きが不透明になると世界中の企業が設備投資を手控えるようになる(一般世帯も消費を手控えるようになるが、性急さでいえば企業の比ではない)。すると、ドイツのように品質の高い機械を輸出してきた国々が打撃をこうむり、それがユーロ安を招くのだ。

 だが最悪の時期はいつかは終わる。運が良ければ今年後半にも。そうなれば、ドイツのように経済の軸足を投資財の輸出に置いている国も復活を果たせるはずだ。

 ヨーロッパ主要国の中期的な経済見通しは依然として明るい。金融危機以前のアメリカやイギリスの消費者は借金を元手に過剰消費に走った。だがドイツの消費者はそんなことはしなかった。

 不況が終息しても、アメリカやイギリスの人々は何年にもわたって消費を我慢しなければならないだろう。しかしヨーロッパ主要国や中国、日本の消費者は、従来どおりの消費パターンに戻れる。

 もちろん、まずは不況が峠を越さなければ話にならない。

 ユーロ参加国は世界的な不況によって一様に打撃を受け、すべての国で経済が減速している。おかげでこれまでバラバラだったユーロ圏が一つにまとまったような感もある。スペインやギリシャなど一部の国が不動産バブル崩壊に瀕していた1年前、ドイツの輸出は順調に伸びていた。

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