単一通貨ユーロが崩壊?
危機に結束する欧州首脳
もっとも、市場があらゆるリスクを回避しようとしているなか、ドイツのようないわゆる経済大国と、アイスランドやスペインのような経済力が弱いとされる国々との違いは際立ってきている。後者が世界の金融市場で資金調達する場合のコストは、ドイツよりもはるかに高い。
そのため経済力の弱い一部の国々がユーロを脱退するのではないかとの憶測も流れている。ジンバブエのように政府に必要な資金を自国通貨発行でまかなおうとするのではないか、というわけだ。
だがその結果としてジンバブエはハイパーインフレと経済破綻に見舞われており、これが効果的な手法でないのは明らかだ。独自通貨の為替レートが下落するリスクもあるだろう。そうなれば政府の借り入れコストはもっと高くなる。
ドイツなどの経済大国がユーロを見放すのではとの見方もほとんど意味がない。今のような不景気のなかでドイツが再びマルクを導入すれば、外為市場でマルク買いが進むかもしれない。マルク高になれば輸出国ドイツの成長見通しはさらに悪化することになる。
政治的な論理からも単一通貨の廃止はありえない。加盟各国は政治的な意味でも、ユーロに多大な「資本」を投じてきた。
ヨーロッパ各国の首脳はほぼ月に1回のペースで集まり、さまざまな議題で話し合いをもっている。ある国が財政危機に陥り、緊急援助を要請するといった事態が起きれば、それを断るのは困難だ。別の議題でその国の賛成票が必要になる可能性があるからだ。
ユーロの価値は高まる
ユーロ圏に果たして複数の加盟国を同時に救済できるだけの資金があるのかという疑問も聞かれる。だが加盟国は、さまざまな方法で互いに助け合える。
たとえば欧州諸国と関係の深いなんらかの機関が、財政危機に陥った国の新規発行国債を一時的に保証することも可能だ。多くの国で実施している銀行債権の政府保証と似た方法だが、危機を乗り切るための時間かせぎができる。
つまり世界の投資家たちには、ユーロ圏崩壊よりももっと心配すべき問題があるということだ。中期的には、金融危機はユーロの価値を高める可能性さえある。
ポーランドやハンガリーなど、EU(欧州連合)加盟国でありながらユーロに参加していない国々は自国通貨の下落に苦しんでいる。これらの国々は、ユーロという傘の下に入ろうと必死だ。
とはいえ、こうした国々が「ヨーロッパで最も排他的なクラブ」であるユーロへの参加要件を満たすには、さらなる努力が必要だ。そして条件が整ったあかつきには、新規加盟国のおかげでユーロはさらに強くなるだろう。
[2009年3月25日号掲載]