最新記事
ウラ読み世界経済ゼミ
本誌特集「世界経済『超』入門」が
さらによくわかる基礎知識
さらによくわかる基礎知識
ニューストピックス
【4】ケインズが正しい、とは限らない。
口ひげが似合うイギリス人経済学者ケインズは、このところ世界中で引っ張りだこ。といっても第二次大戦前に活躍したケインズが今も飛び回っているわけではない。彼の理論に基づく景気対策が各国で大人気なのだ。
アメリカは今年2月、78兆円の景気刺激策を決めた。中国は昨年11月、58兆円の対策を発表。日本やヨーロッパ諸国も相次いで景気対策を打ち出している。これらは基本的にケインズ型の政策といわれている。
ざっくり言うと、ケインズ政策とは政府がカネを使って景気を押し上げること。不景気になれば公共事業で道路や橋を造ったりするのが伝統的な例。民間の需要が落ち込んでいるときは、政府が需要をつくり出すしかないという考え方が根っこにある。
一見分かりやすい話だが、だからといって正しいとは限らない。そもそもケインズ政策は一種の痛み止めであり、一時的な効果しかない。病人(経済)が痛み止めで一旦元気になっても、病気そのもの(経済全体の弱点)を治さなければまた倒れてしまう。
それにカネの使い方によっては効果がない場合もある。ダメな企業を生き延びさせ、経済全体の効率を損なう恐れもある。政府の借金も増え、将来の増税につながることもある。ケインズ政策は近年、アメリカなどでは時代遅れと見なされてきた。
とはいえ、今の世界は非常事態。激痛を止めないと病人が持たない。環境・エネルギーなど将来性のある分野にカネを使えば、長期的にも役立つかもしれない。ケインズ先生が地球を救う、となればいいのだが。
[2009年4月15日号掲載]