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在日米軍の真実
海兵隊の密着取材で見た
オキナワ駐留米兵の知られざる素顔
オキナワ駐留米兵の知られざる素顔
知られざる在日米軍の素顔
第3章──ゲート2通り
「レイプ」や「ヘリ墜落」でのみ語られる沖縄の兵士たち
極東の楽園でイラクや北朝鮮の幻影と戦う彼らの真実とは
基地との共存 嘉手納基地付近の民間施設に描かれた壁画 Peter Blakely-Redux
普天間基地の移設問題で、在日米軍の存在が再び問われている。沖縄での犯罪や事故といった問題のみがクローズアップされてきた在日米軍だが、彼らの勤務実態や日々の生活はあまり伝えられない。米軍再編交渉を目前にした2005年春、海兵隊の野営訓練から米空軍F15戦闘機飛行訓練まで、本誌記者が4か月に渡る密着取材で見た在日米軍の本当の姿とは──。
沖縄市の嘉手納空軍基地は、基地自体が一つの都市を成している。アメリカ郊外の完璧なレプリカといっていい。面積は東京都千代田区のほぼ2倍。アメリカ風の名称がつけられた道路を、迷彩服の歩行者が行き交う。祖国を離れた米軍兵士にとって、第2の故郷のような場所だ。
居住エリアに足を踏み入れれば、芝生の前庭を備えた家がずらり。小さな子供がすべり台や3輪車で遊び、少年たちは父親とフットボールを投げ合う。母親たちは遊ぶわが子を横目で見ながら、おしゃべりに熱中している。
基地内には、アメリカ流の生活に欠かせない「舞台装置」がそろっている。スーパーや学校、スポーツジム、病院、映画館、ボーリング場、バーガーキングやタコベル。18ホールのゴルフ場まである。
他の都市と同じく、2万2000人の住民の職業はさまざまだ(うち7200人は軍用機のパイロットや整備兵など)。軍の法律問題を扱う弁護士や財政面を担当する経理専門家、コンピュータネットワークを管理する技術者もいる。
第18航空団第44戦闘中隊に所属するF15戦闘機パイロット、ブランドン・ハフ中尉(28)のオフィスは、デスクにデルのコンピュータと書類トレイが整然と並ぶ快適な空間だ。世界最強といわれる戦闘機を超音速で飛ばすとき以外は「仕事の6割はデスクワークだ」と、所属中隊の経理を担当するハフは言う。他のパイロットも、物資の調達計画や日程の調整などの管理業務をこなしている。
オフィス勤務でないときのハフは、沖縄南東部の沖合で実戦を想定した訓練に従事する。朝鮮半島や台湾海峡の情勢に大きな変化はないが、ハフらが実戦に参加する可能性は決して少なくない。
空軍は00年以来、極東における抑止力として駐留に力点をおく姿勢を見直し、緊急時の即応能力を高める方針に移行している。日本に駐留する空軍兵士が、紛争地へ一時的に派遣されることも想定される。
「われわれの任務は大統領の要求に従うこと。リスクは承知だし、ときには命の危険も伴うかもしれない」と、ハフは言う。「命を危険にさらす気はないが、その覚悟があるかと聞かれれば、答えは『イエス』。会社員と同じで、上司の命令に従うだけだ」
確かに軍人は、商社の駐在員のようなものだ。辞令のままに国内外のあちこちへ赴任する日本人商社マンと同じく、沖縄など日本各地の基地にいる米兵も、自分で行き先を決めたわけではない。「異動願い」が通るとはかぎらないし、大半の兵士は2、3年もすれば別の基地へ送られる。
軍人と一緒にやって来る妻たちも、基地内で仲間をつくる。夫の所属部隊ごとに集まる場合がほとんどで、家族ぐるみで交際し、夫たちが長期の派遣活動に参加しているときは支え合う。「お互いに面倒を見るの」と言うのは、ハフの妻のシェリー。「司令官の奥さんも電話をくれて、『調子はどう?』とか『買い物に行くけれどいるものはない?』と聞いてくれる」
彼女たちも、日本の商社マンの妻と似た立場におかれている。「夫の昇進の助けにはなれないのに、昇進の邪魔になることはいくらでもある」と、あるF15戦闘機パイロットの妻は言う。家族や夫婦の問題に気を取られる兵士は、隊の士気を低下させるとみなされ、上官の不評を買うという。