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ピンクの侍がセックスを斬る
日本人のエロスを温かいまなざしで照らし出す
正直に言おう。異文化が出合うときに何より興味をそそられるのは、セックスにまつわる違いだ。
裸の体にスポットライトを当てれば、無防備な真実の姿が見えてくる。ニコラス・バーノフの著書『ピンク・サムライ──日本社会のエロチックな探究』は、日本人のエロスを温かいまなざしで照らし出している。
エロスとは本来、古代ギリシャの愛の概念を表す言葉。だが、そこから派生した日本語の「エロ」は、エロおやじという表現もあるように、日本人独特のセックス観を象徴する単語になった。
キリスト教文化圏の欧米では、セックスは「罪」だ。一方、善悪の絶対的な基準がない日本で問題になるのは、恥ずべき行為かどうかということ。好色に寛大で、性愛は人情の世界に属すると考えられているため、エロおやじも決して蔑称というわけでもない。
『ピンク・サムライ』の魅力は、性的なだじゃれに満ちたユーモアと鋭敏な分析の絶妙なブレンドにある。性的な満足感と自己理解はコインの裏表だというのが、バーノフの信条だ。能からノーパン喫茶までカバーする広範なエッセーからは、情熱的に自由を追い求める社会の姿が浮かび上がってくる。
[2005年5月18日号掲載]