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謎だらけの島でなくしたスリルが復活
複雑すぎる設定で迷走した『LOST』、シーズン4で再び視聴者をクギづけにした秘策
謎多き島 ミステリアスな島で人間関係が錯綜する物語に、脚本家はどのような結末を用意するのか
©ABC STUDIOS
『LOST』といえば、孤島のジャングルで次から次に迫りくる危機に立ち向かうサバイバルミステリー。だが最新のシーズンは一転して、ありふれた日常の光景から始まる。
けたたましくサイレンを鳴らすパトカーの一団から逃げ回る白い車。すると画面は、そのカーチェイスをテレビで眺めながらオレンジジュースをコップに注ぐ男に移る。映し出された顔はジャック(マシュー・フォックス)だ。
白い車を運転していた男は警官に逮捕されるが、こちらもおなじみの顔。ハーリー(ホルゲ・ガルシア)だ。
どうなっちゃったの? たしか2人とも仲間と島にいたはずなのに。いや、これはまったく新しい『LOST』の世界の始まりだ。第3シーズンなど忘れてしまえ。
04年に始まった当初、『LOST』はいろいろな意味で型破りなドラマだった。展開も脚本も大作映画に引けを取らず、仕掛けられた大きな謎が視聴者を魅了した。
無人島に不時着したオーシャニック航空815便の乗客は、しだいにその場所が異常なことに気づいていく。シロクマのような怪物に追いかけられたり、島自体に不思議な力があるように感じたり。しかも、島にいるのは自分たちだけではないらしい......。
登場人物の素性もミステリアス。彼らの過去は一連のフラッシュバックによって、徐々にわかってくる。ジャックは父親の遺体をオーストラリアから運んでいた医師で、心優しくて頼りがいのあるケイト(エバンジェリン・リリー)はかつて銀行強盗だった。
脱出後の未来を見せる?
ところが第3シーズンに入るころには、複雑すぎる設定が重荷に。謎は解明されず増える一方。新しいキャラクターが続々と投入され、古いメンバーは意味もなく殺される。視聴者は無関係なシーンの寄せ集めを見せられているような気分になったものだ。
不評にさらされたクリエーターたちは二つの解決策を考え出した。まずシリーズを6シーズンで終えると決定。期限を決めれば、脚本家は内容に集中できる。
同時にストーリーを展開させるうえで見事な手法を考え出した。それは、過去ではなく未来を見せる「フラッシュフォワード」。島を脱出した後の主要キャラクター6人の姿を見せるのだ。これによって「物語の構造がまったく変わった」と、クリエーターの一人であるデイモン・リンデロフは語った。「未来のパートには心動かされる要素がある。視聴者は、『なぜこうなったんだ』と、ストーリーに引きずり込まれる」
脱出者の一人、ハーリーには過酷な現実が待ち受ける。島から解放されたのに、今度は精神病院入り。第4シーズンは、ハーリーが運転する車のように猛スピードで、これまでのドラマが試みたことのない新しい領域へと突き?進む(AXNにてシーズン1〜4連続放送中。シーズン5今夏、日本独占初放送決定)。視聴者は目をそらすことができない。
今やファンも批評家も、かつてのような熱い口調で『LOST』について語っている(第4シーズンの初回の視聴者は1600万人。第3シーズンの最終回より300万人以上も多い)。
米脚本家組合(WGA)のストライキが長引いて、通常より少ない14話構成になったことも幸いした。何事も起こらない「つなぎ」のエピソードは一つもなく、登場人物たちが島を脱出するフィナーレへとなだれ込む。