コラム

イランもイスラエルも「本当は全面衝突を望んでいない」...それでも、ネタニヤフはなぜ対立を利用するのか?

2024年08月19日(月)17時20分

しかし、深刻なのは、現在の瞬間風速的な緊張状態がなかったとしても、長期的に見れば、イスラエルとイランの緊張は一過性のものではないこということだ。

イスラエル建国後、両国は一時は外交関係を築いたが、1979年のイスラム革命で激変した。イラン現政権は国際的に多くの国が認めている現在のイスラエルすらも「占領」と見なし、イスラエルの存在そのものを敵視する。

パレスチナ国家が樹立されれば、その姿勢が和らぐと思いたいが、イスラエルは目下、いかなる形であれパレスチナ国家を認めるつもりはなく、むしろ実質的な「パレスチナ併合」に突き進んでおり、解決の糸口は見えない。

イスラエルとイランの敵対関係は、中長期的に中東を再び戦火に陥れる危険性をはらむ。しかも、それは核戦争の可能性すらあるのだ。

その引き金がいつ引かれることになるのかは誰にも分からないが、引き金を引かせないためには国際社会による強い働きかけが必要だ。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。元NHK記者。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。エルサレム在住。

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