コラム

アメリカのユダヤ系大物政治家はなぜ「異例の発言」に踏み込んだのか...「痛烈なイスラエル首相批判」の背景

2024年04月11日(木)16時20分

だが、ネタニヤフはこの紛争に政治的な生き残りを懸ける。戦争での「完全勝利」を訴え、最大の後ろ盾であるバイデン米大統領への「抵抗」すら演出する。

アメリカとの関係は歴史的なレベルで悪化し、元駐米イスラエル大使イタマール・ラビノヴィッチは「ネタニヤフ首相はバイデン政権との対立を『政治的資産』にしようとしている」と批判。


 

現地のテレビ局「チャンネル13」の世論調査でも、回答者の半数以上が「首相が戦争の勝利よりも政治的生き残りを優先している」と回答し、その意図を見透かす。右派層も含め国民の8割近くがネタニヤフ退陣を支持しているものの、首相は自身の責任を明確にせず、その不満は爆発寸前だ。

イスラエルの行く末は、今後のパレスチナ問題との向き合い方次第だ。「このまま事実上の『一国家』に近づいていくのであれば、アメリカも含めた他の世界との関係は決裂することになる」と、シューマーは忠告した。それはユダヤ人国家の国際的な評価にも関わるからだ。

シューマーという姓はヘブライ語の「ショメール(守護者)」に由来している。シューマーは、演説の原稿を書き上げるのに2カ月を要したと言い、守護者であり親友からの言葉にはそれだけの重みが込められている。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。エルサレム在住。

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