コラム

コロナ対策を拒否するトランプ支持者は現代の恐竜?(パックン)

2020年05月15日(金)15時20分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Dinosaurs in Coronavirus Era / (c)2020 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<トランプ支持の共和党員は、コロナの時代に「ソーシャルディスタンス」も気に掛けない>

現状に適応しない時代遅れの人は英語で dinosaur(恐竜)と揶揄される。風刺画で恐竜に例えられているのはトランプ米大統領の支持者たち。

「MAGA(Make America Great Again=アメリカを再び偉大にする)」のロゴ入りキャップや 「TRUMP2020」のTシャツという応援グッズを身に着けていなくても、セリフだけでそのキャラ設定が分かる。Screw the warnings...We need to get back to life as we know it! (警告なんかくそくらえ...いつもの生活に戻らなきゃ!)というのは、トランプ支持者ならではの発言だ。

新型コロナウイルスの流行中、トランプ本人は(大統領執務室の机に似合わないという理由で)マスクを着用しない。感染者と接触した後も、他人との交流を自粛しない。感染の可能性があるために自主隔離する議員をバカにする。感染拡大中に集会を開く。州の外出制限に反対する各地のデモをあおり、感染率が上昇しているときにも制限の解除を呼び掛ける。

日本でいう「新しい生活様式」も考えない。他人と距離を取り、イべントなどの中止を含む長期的な「ソーシャルディスタンス(社会的距離)戦略」を専門家が勧めるなか、トランプはアラバマ大学のアメフトの試合に11万人が来場するような「ノーマル」に早く戻りたいと話す。最大10万人ちょっとしか入らないスタジアムだから、今までよりも濃厚な接触になるね。

大統領のメッセージはさすが、支持者に浸透している。アメリカで1日2000人以上がコロナ関係で亡くなるなか、世論調査で「普通の生活に戻る準備はできているか」と聞いたところ、共和党員は民主党員より10倍多い確率でイエス!と答えた。コロナの時代にまさに dinosaur の考え方だ。共和党の愛称をGOP(古き良き党)からJP(ジュラシック・パーク)に改名すべきかもしれない。

ただ、恐竜の例えには大きな弱点が2つある。比喩としては「いずれ絶滅するだろう」という蔑視的なニュアンスと、「進化の先に人間という種がいる」という希望が入っている。しかし恐竜を絶滅させた隕石と違って、今の地球に降り掛かっている脅威は人間の愚行が引き起こしたもの。そしてその打撃は人類みんなが受ける。絶滅するのは恐竜だけではなく、適応しようと必死に頑張っている僕らも道連れになり得るのだ。

もちろん、恐竜の歴史を引き合いに、「進化上の負け組」にならないようにしよう!とトランプ支持者を説得する手も考えられる。しかし、そこでもう1つの弱点が現れる。共和党員の多くは進化論も信じないのだ。

<本誌2020年5月19日号掲載>

20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ポルシェ、関税で値上げも コスト削減へ

ビジネス

車載電池ノースボルト、スウェーデンでも破産申請 欧

ワールド

トランプ氏の書簡、近くイランに到着=外相

ビジネス

英、決済規制当局を廃止 金融監督機構改革で企業の負
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story