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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
トランプに無罪評決を下した弾劾裁判のトンデモ論法(パックン)
Long Live The King!/©2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<パックンも赤面!母校であるハーバード大学の元教授でトランプを弁護したスゴ腕弁護士が、トランプを無罪にするために持ち出した信じられない論法とは......>
時々、自分とつながりのある人の愚行で自分も恥ずかしくなることがあるよね。同じ事務所の人が不倫騒動を起こしたとき、同じ党の人がヤジを飛ばしたとき、同じ国の人があの大統領を選んだときなど。
この間、僕と同じ大学の人があの大統領の弾劾裁判で発言したが、実に恥ずかしくなった。ハーバード大学の元教授アラン・ダーショウィッツは超有名なすご腕弁護士。
殺人事件でアメフト選手のO・J・シンプソン、未成年性的暴行事件で大富豪のジェフリー・エプスタイン、レイプ事件でハリウッド・プロデューサーのハービー・ワインスティーンなどの弁護を務めてきたが、今まで気にならなかった。
でも今回は、おそらくシンプソン、エプスタイン、ワインスティーンでさえ恥ずかしくなったはず。選挙に有利な情報を求めてウクライナ政府に圧力をかけた、つまり国益より自己利益優先の権力乱用をした疑いのあるドナルド・トランプ大統領。
その弁護人のダーショウィッツは弾劾裁判で、「当選することが国益につながる」と解釈し、「大統領が国益とする当選のために行うことは、弾劾に値する『取引』にはなり得ない」と弁解した。
はなはだしい愚論だ。確かに、「大統領の自己利益=国益」と考えれば、選挙に勝つためなら何でもOKだろう。でも、この発想は民主主義ではなく独裁国家のものだ(後日、ダーショウィッツはそういう意味ではないと主張。よかった!)。
ここで思い出されるのは、風刺画でおなじみのポーズを取っているリチャード・ニクソン元大統領の発言(彼も弁護士出身だ)。大統領として2期目を狙う1972年の選挙戦中、有利な情報を求め、手下が民主党の選挙本部に空き巣に入ったウォーターゲート事件でニクソンは弾劾されそうになった。
トランプと同じ動機で、訴追条項も同じ権力乱用や司法妨害だったが、弾劾決議寸前に辞職した。しかし、その数年後のインタビューで、彼は弾劾の根拠をこう否定した。When the President does it, it's not illegal.(大統領がやるときは、違法ではない)
こんな暴論が当時も今も通じるはずはない。と思いきや、上院で支配権を握る与党・共和党が「ダーショウィッツ論法」で証人を召喚せず、新しい証拠も要求せず、あっさり無罪だと片付けた。
こんないかさま裁判こそ恥ずかしくなる。でも、共和党議員はきっと国益を優先しているつもりだろう。彼らも「自己利益=国益」と考えているから。
<2020年2月18日号掲載>
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