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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
オバマからトランプへ、米政治の「退化論」(パックン)
From Hope to Hate / ©2020 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<汚職とヘイトを重ね続ける、そんな大統領を許せるか? 今の共和党員は口をそろえて答えそう、Yes, we can!>
この10年間でアメリカ政治は退化した。オバマ政権時代を象徴したHope and Change(希望と変化)は今やHate and Corruption(憎しみと汚職)に変貌。ドナルド・トランプ大統領は集会や会見で、またはツイッターを通して堂々と憎しみを発信している。まるでスローガンのようだ。その実例が多過ぎて、枚挙にいとまはない。いや、ある!
さあ、ここからはトランプのワンポイント・ヘイト・イングリッシュ! 大統領が個人攻撃に用いる文句を教えるから、皆さんも大きな声で......繰り返さないでくださいね。まずはDope(バカ)、Dopey(バカ)、Dumb(バカ)、Dummy(バカ)、Fool(バカ)、Low-IQ(バカ)......。ちょっと待って! 「バカ」の種類だけでレッスンが終わりそう。 ほかのテーマに行こう。
お次は、Crazy(狂っている)、Nut job(狂っている)、Weak both mentally and physically(精神的にも身体的にも弱い)......。あっ、これもワンパターンだ。違うのを探そう。Phony(偽物)、 Spoiled brat(甘ったれた悪ガキ)、Low class slob(下層階級の薄汚い奴)。いいね!
いや、よくない。ヘイトだから。
「個人攻撃はヘイトスピーチではない」と指摘する人もいるかもしれない。そのとおりだ。ヘイトスピーチは、ある特徴を持った社会的弱者などに対するもの。例えば、けいれんのまねをして身体障害者をバカにするとか、女性をHorse face(馬面)やDog(犬)とけなすとか、移民をrapists(レイプ犯)やdrug traffickers(麻薬売人)と一緒くたにしたり、獣や寄生虫のように表現したりとか、人権を訴える黒人アスリートをSon of a bitch(雌犬の子)と罵るとか。それならヘイトスピーチに当たる。はい、全部トランプがやっていること。見事な反面教師だね。
Corruptionも堂々と公衆の面前でやる。例えば、ゴルフ絡みのもの。ハフィントン・ポストの試算では、就任2年半でゴルフ旅行の警備費などで税金1億ドル以上を使ったが、ゴルフ場はトランプ所有のリゾートだから公金の一部は彼の財布に。G7サミットを自分のホテルで開催すると発表したのも、それを撤回するときに大統領の座を使ってホテルのPRをしたのも汚職だ。政敵ジョー・バイデン前副大統領を捜査するよう外国政府に働き掛けた「ウクライナ疑惑」も、それが発覚した直後、テレビカメラの前で中国にもバイデンの捜査を呼び掛けたのも汚職。
汚職に汚職を、ヘイトにヘイトを重ね続ける、こんな大統領は許せるか? その問いに、今の共和党員は口をそろえて答えそう。Yes, we can! と。あ~、オバマが恋しい。
【ポイント】
WHAT A DIFFERENCE A DECADE MAKES...
10年でこんなにも変わるものなのか......
<本誌2020年1月21日号掲載>
2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。