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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
大統領が慰める相手は銃乱射の被害者、じゃなくてサウジアラビア⁉(パックン)
I've Got Your Back
<実は歴代の米大統領もサウジアラビアには妙に優しい>
先日フロリダ州ペンサコーラで発生し3人が死亡した銃乱射事件は、日本であまり報道されなかった。しょうがない。2019年、死亡者3人以上の乱射事件は週1回以上のペースで起きた。全部報じるのは難しい。「今週の乱射事件」をまとめたニュースハイライトなんか嫌だし。
でも、今回は特別な話題性があった。場所は米海軍のパイロット訓練施設で、犠牲者は海軍兵。犯人はサウジアラビア空軍少尉だから当然、ドナルド・トランプ大統領の反応が注目された。彼は以前、「イスラム過激派と戦争中だ」と宣言した。ロンドンでのイスラム過激派テロの後、「あの獣たちは狂っている。力で対応するしかない」とツイートした。攻撃を恐れて「イスラム教徒の全面入国禁止」を大統領選中に呼び掛け、実際にイスラム圏7カ国からの入国を禁ずる大統領令を発令した。そんなトランプはもちろん、イスラム教徒による大量殺人事件に黙っていない。会見で思いっきり犯人の出身国を......かばった。
実は歴代の大統領もサウジアラビアには妙に優しい。2001年、9.11テロの犯人のほとんどの出身国であるサウジアラビアを責めなかった。全土で飛行禁止令が出るなか、サウジの王室サウド家と王族関係者は飛行機で特別に帰国させてもらえた。テロの首謀者ウサマ・ビンラディンの一族である、ビンラディン家の人も含めてだ。当時の大統領はサウド家と家族付き合いがあり、ビジネス関係が近いジョージ・W・ブッシュだった。
16年には9.11テロの遺族のサウジアラビア政府に対する賠償請求を可能にする法案が米議会を通った。だが、バラク・オバマ大統領が拒否権を行使した(最終的には立法されたけど)。
でもその周辺国には厳しい。この20年でサウジアラビア人からの攻撃で亡くなったアメリカ人は約3000人。一方、いわゆる「イスラム教徒入国禁止令」の対象国の国民が米国内のテロで殺したのは0人。9.11の犯人19人のうち、15人がサウジアラビア人で、残りはUAE(アラブ首長国連邦)、レバノンやエジプト国籍だった。アメリカが報復攻撃したのは......アフガニスタン。
不思議だね。当事国より周辺諸国が罰せられている。パックンの悪さでマックンが怒られるようなものだ。ま、それなら構わないけど。
【ポイント】
I'M HERE TO COMFORT THOSE ADVERSELY AFFECTED BY THE SAUDI ARABIAN SHOOTER IN PENSACOLA.
ペンサコーラでサウジアラビア人銃撃犯から被害を受けた人々を慰めるために来ました。
THERE, THERE.
よしよし、大丈夫だよ。
<本誌2019年12月31日/2020年1月7日新年合併号掲載>
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。
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