コラム

日米首脳会談で「ホームラン」を打った石破首相、そこに潜む深刻な懸念材料

2025年02月22日(土)15時45分

最も驚いたのは、多くの識者が考える石破外交の勝因がほぼ一致したことだ。私が最もよく聞いた言葉は、石破とそのチームは明らかに入念に準備していたというものだ。彼らのアプローチがどんなものだったのか、衝動的な米大統領の共感と歓心を得たい他国の指導者は興味津々のはずだ。

日米首脳会談の前後にワシントンと東京に滞在したジャパン・ソサエティーのジョシュア・ウォーカー理事長はこう絶賛した。「石破首相は日本国内でほとんど期待されていなかったホームランをホワイトハウスで打った。彼は正しいことを全て言い、トランプ大統領は『偉大な資質を持つ』偉大な首相と呼んだ。これで自民党が石破を交代させるのは極めて難しくなった」


ウォーカーに言わせれば、特に素晴らしかったのは「相互関税」の話を「投資と協力」にすり替えたことだ。「(このテーマは)両首脳の議論の主役となった。例えば日本の対米投資1兆ドルの公約、アラスカのパイプラインへの参加、ソフトバンクのAI(人工知能)投資。日本はアメリカからエネルギーと武器、そしておそらく農産物を購入する意思を示した。これでトランプ政権の圧力はいくらか緩和されるはずだ」

とはいえ、潜在的な懸念材料も2つある。ある元米政府当局者は、良好な雰囲気の大半は故安倍晋三元首相へのトランプの敬意の影響だろうと指摘した。トランプ自身も暗殺未遂事件を経験しただけに、その思いはさらに強まっていそうだ。実際、石破が大統領就任後のトランプと会談した2人目の外国首脳になれたのは、昭恵夫人の尽力による部分が大きい。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story