コラム

日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」

2025年01月22日(水)16時20分

日鉄がこの逆境を覆して買収を成功させるには、小さな奇跡が必要だろう。1980年代から日本との経済競争を強く意識していたことを考えると、トランプにとってアメリカの製造業復活は重要な政策の柱であり、日本企業への売却を容認すれば文字どおり百八十度の方向転換になるからだ。

バイデンが買収禁止を決め、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプが大統領就任となれば、日鉄の買収が成功する可能性は消えたように見える。しかも同業のクリーブランド・クリフスが、米最大手のニューコアと組んで再挑戦してきた。クリフスは2年前にもUSスチールに買収を持ちかけたが、にべもなく拒否されている。


クリフスのローレンソ・ゴンカルベスCEOの日鉄に対する暴言は、日鉄が大逆転する可能性を示唆しているのかもしれない。買収を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は日鉄の買収計画破棄の期限を6月中旬まで延長することを認めた。

理屈の上では、日鉄の逆転勝利は全くの夢物語に思える。トランプは大統領選での勝利後も、外国人によるUSスチールの所有に猛反対を繰り返してきた。ただし、トランプは筋金入りの「ディール(取引)」好きだ。

もし周囲の自由市場重視派が日鉄の買収を阻止すれば同業の中国企業が優位に立つと説得すれば、心変わりもあり得るのではないか。あるいは猛反対はもっと有利な買収条件を引き出すための演技ではないのか。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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