コラム

ハリス、副大統領から大統領候補へ...「マダム・プレジデント」の誕生なるか

2024年08月02日(金)10時50分

newsweekjp_20240801021821.jpg

ハリスの副大統領候補としてペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロも名が挙がっている TIM NWACHUKWU/GETTY IMAGES

付け加えれば、もともと無党派層にはトランプもバイデンも嫌いという人が多い。しかし候補者の顔が変われば、そうした「ダブル嫌い」の有権者にも新たな選択肢ができる。こうした点を考慮すると、ハリスへの支持は今後も高まりそうだ。

民主党議員の中には、まだハリスの正式指名に異議を唱える者もいる。しかしハリスは既に党重鎮の支持を固め、他の潜在的な候補者を圧倒し、党全体のエネルギーを活性化させている。しかも、一度は消えかけていた「トランプを倒せる」という希望に再び火をともした。


潔い指名辞退で有終の美

民主主義における政治的な競争には普遍的な公理があり、候補者はもっぱらライバルとの比較において判断される。バイデンがもっと早く撤退しなかった理由の1つは、トランプを負かし、民主主義を守るには誰よりも自分が適していると心から信じていたからに違いない。

しかしハリスのほうが自分より強いという世論調査のデータを見たとき、バイデンはついに折れた(長年の盟友たちから強く撤退を求められたという事情もある)。

ロイター通信の世論調査によると、ハリスはロバート・ケネディJr.が入った場合、トランプに誤差の範囲を超える4ポイントの差をつけている。予期せぬ支持率急増の一因は、若くて快活な女性と、78歳のトランプという対比がもたらす見た目のインパクトだ。本稿執筆時点での賭け市場を見ると、ハリスは今回の選挙を五分五分のところまで押し戻している。悲惨な討論会直後のバイデンに比べると、勝算は倍になった。

バイデンの撤退は広く称賛を浴びている。予備選で民主党の指名を簡単に勝ち取った後、選挙戦から撤退するという決断を下すことができた大統領候補はバイデンだけだ。

バイデンの行為は、高い道徳性、至高の愛国心さえ感じさせるものだ。これでハリスが最終的に勝利すれば、彼は真の政治家として歴史に名を残すことができるだろう。逆に、自分の悪あがきでトランプ再選を許すことになったら、この4年間の大統領としての業績はその輝きをほとんど失ってしまう。バイデンはそのリスクを十分に理解していた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、中国軍関連企業にテンセントやCATLなど指定

ビジネス

日鉄株が軟調、USスチール買収計画に否定的なトラン

ビジネス

FRB副議長が辞意、金融規制担当 次期政権との「衝

ビジネス

日鉄会長が会見、勝訴に自信 買収計画の代替案「ない
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 2
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻止を喜ぶ環境専門家たちの声
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    空腹も運転免許も恋愛も別々...結合双生児の姉妹が公…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    ウクライナ水上ドローンが「史上初」の攻撃成功...海…
  • 8
    ウクライナの「禁じ手」の行方は?
  • 9
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 10
    プーチンの後退は欧州の勝利にあらず
  • 1
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 2
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 3
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に突き落とした「超危険生物」との大接近にネット震撼
  • 4
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 5
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 6
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 7
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 8
    「これが育児のリアル」疲労困憊の新米ママが見せた…
  • 9
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 10
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story