コラム

米大統領選2024は「トランプ対バイデン」の再戦へ、選挙戦を左右する5つの要因とは

2023年12月21日(木)17時44分

■選挙制度

見落とされがちだが、選挙制度の仕組みにより、本選挙ではそもそも共和党候補がかなり有利になっている。民主党支持者が都市部に集中する傾向が強まっているのに対し、共和党支持者は地方に多いため、民主党支持者の1票の重みは共和党支持者より軽い。

民主党の地盤であるカリフォルニア州の有権者の1票の重みは、共和党の地盤であるワイオミング州のおよそ4分の1。バイデンが当選するには、得票率でトランプを5%上回らなくてはならない可能性が高い。

有利になるのは?──主としてトランプ。

■経済

政治学者は、選挙予測を精緻な数値モデルや深遠な歴史的考察で飾りたがるが、米大統領選をめぐる真理の1つは、景気がよければ現職が勝ち、景気が悪ければ現職が負けるというものだ。

現在、アメリカの景気は堅調だが、有権者はそうは感じていない。

世論調査によると、経済運営の手腕に対する評価ではトランプがバイデンを大きくリードしている。

ただし、景気が急速に冷え込まなければ、バイデンは今後、景気の堅調ぶりをもっとアピールできるかもしれない。

有利になるのは?──どちらとも言えない。

■国際情勢

ウクライナに続いてパレスチナでも戦争が始まり、世界の分断と不安定化が進んでいる。ミサイルの誤射が1発あるだけでも、第3次世界大戦が勃発しかねない。

この要素は、バイデンに有利に働きそうに思えるかもしれない。

アメリカ人は、有事には軍最高司令官である大統領を支持する傾向があるし、不安定なトランプよりバイデンのほうが冷静な印象があるからだ。

しかしトランプは、自身の政権下では一連の戦争は起きなかったと強調し、弱腰のバイデンがハマスやイランやロシアをつけ上がらせたと主張するだろう。

有利になるのは?──どちらとも言えない。

◇ ◇ ◇


現時点では、どちらの勝利にも大金を賭ける気にはなれない。強いて言うならば、今日の段階ではトランプのほうが優勢だろう。

とはいえ、現職のパワーは侮れない。バイデンの巻き返しが始まる可能性は高い。

2024年11月5日の大統領選投開票日には、またしても当選者がなかなか明らかにならず、私たちはテレビやインターネットにかじりついて夜更かしすることになるかもしれない。その日に備えて、今のうちに「寝だめ」しておこう。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大

ビジネス

印財閥アダニ、資金調達に支障も 会長起訴で投資家の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story