コラム

「トランプ」が民主党の勝因。そして共和党に2人の新星が登場した

2022年11月18日(金)06時30分

221122p18chartPNGmama.png

第2に、共和党に投票する理由を一般的な有権者に尋ねたら、民主党はアメリカを破壊しているからと答えるだろう。共和党が政権を取って何をするのかについては、ほとんどの有権者が答えられないはずだ。

一方の政党が大勝する選挙では浮動票、特に「教会に行かない」無党派層の支持を確実に獲得することが勝利の条件になる。

しかし、無党派層の投票基準は「否定的党派性(ある党を支持して投票するのではなく、ある党に反対するために他党に投票する)」よりも、自分たちの状況を改善できるかどうか、だ。共和党が民主党は社会主義者であると罵倒しても、効果があるとは考えにくい。

現在の共和党は事実上、不満と不安の党であり、変化の潮流に徹底してあらがっている。この実態は選挙結果にも表れている。

共和党は58%対40%で白人票の多数を獲得したが、黒人票は13%対86%、中南米系は39%対60%、アジア系は40%対58%で民主党の後塵を拝した。キリスト教福音派の間では83%対15%と圧倒的に支持されたが、それ以外は40%対59%にとどまった。45歳以上では54%対44%と多数派だったが、44歳以下では42%対55%で惨敗した。

侮れないバイデンの嗅覚

そして最後に、トランプが「党内キングメーカー」の座にこだわった結果、本選挙に向かない並以下の候補者ばかりが名を連ねることになった。

トランプの推薦は共和党の予備選では強力な武器になったが、本選挙では逆に不利になった。

実際、共和党が上院の多数派獲得に失敗したとすれば、敗因はトランプの党内予備選への介入だ。

特にペンシルベニア州(メフメット・オズ)とジョージア州(ハーシェル・ウォーカー)の候補選択は笑止千万だった。医師でテレビ司会者のオズはペンシルベニアに住んでいない上に、ひどい失言を連発。脳卒中を起こして健康面に不安のあったジョン・フェッターマン副知事に負けた。オズ以外の候補なら楽勝だったはずだ。

そして上院全体の支配権を懸けた戦いになるかもしれない決選投票の実施が決まったジョージア州。元アメリカンフットボールのスター選手ウォーカーの得票率は、同じ共和党で再選を決めたブライアン・ケンプ州知事(トランプともめたことで有名だ)の得票率より約5ポイントも低かった。もっと適切な候補者を選んでいれば、共和党は上院の多数派を問題なく手に入れていたはずだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

輸出規制厳格化でも世界の技術協力続く=エヌビディア

ビジネス

ラトニック氏の金融会社がテザーと協議、新たな融資事

ビジネス

米、対中半導体規制強化へ 最大200社制限リストに

ワールド

ヒズボラ、テルアビブ近郊にロケット弾 ベイルート大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story