コラム

今年の米中間選挙はここが違う! 民主党が「多様化」したから共和党が「強い」

2022年11月08日(火)17時45分

221115p18_POH_01.jpg

PHOTO ILLUSTRATION BY JOHN M. LUND/GETTY IMAGES

共和党に有利な構造的要因

民主・共和両党の支持基盤は、この20年ほどで微妙に変わった。その結果、中間選挙では共和党が有利になった。大統領選とセットなら話は別だが、それ以外の選挙では共和党に構造的な利点がある。

ジョージタウン大学でアメリカ政治の入門編の講義をするとき、私はよく学生たちにこう質問する。民主(または共和)党員と聞いたとき、真っ先に思い浮かぶのはどんな人間か? 一種の連想ゲームだが、これをやると最近の中間選挙で共和党が強い理由がよく分かる。

まず共和党員については、ほとんどの学生が白人男性を思い浮かべる。しかし民主党員については、わずか20人ほどのクラスで10通りほどの答えが返ってくる。黒人、中南米系から大学教員まで、実に多彩だ。

若い学生たちの回答だが、そこには過去30年間における両党の変質がくっきりと反映されている。

つまり民主党は一段と多様化を進めたが、共和党は(大学を出ていない支持者が著しく増えたという点を除けば)ほぼ変わっていない。

共和党の支持層は「一体化」が進み、民主党の支持層は「多様化」した。

こうなると、共和党は毎度おなじみの主張を繰り返すだけで支持者を動員できるが、民主党は異なる支持層に向けて異なるメッセージを用意しなければならない。

この違いが中間選挙の結果に大きく影響する。なぜか。

まず、アメリカ人は大統領選になると熱狂するが、それ以外の選挙では投票意欲が落ちる。その場合、単純なメッセージで支持者を動員できる共和党のほうが有利だ。

また民主党の支持者には若い世代が増え、共和党の支持者には中高年層が増えた。そして党派を問わず、若者は中間選挙をパスしがちだが、高齢者の投票率は高い。ここでも共和党が有利だ。

そして最後に、民主党内のイデオロギー対立がある。20年前に比べて、民主党では「リベラル」または「とてもリベラル」を自称する支持者が増えたが、共和党支持者は一貫して「保守」または「とても保守」だ。

そうなると、中間選挙での共和党は保守に徹することで民主党に勝てる。対して党内にイデオロギー対立を抱える民主党では、自分の支持する候補が予備選を勝ち抜けなかった場合、その人は本選で投票所に足を運ぶ意欲を失う可能性が高い。

共和党の支持者は、本選の候補者が気に入らなくても、党のため(保守主義のため)に投票する。

共和党のこの強みが最も明瞭に表れたのがバラク・オバマの時代だ。オバマは大統領としての2期8年を通じて、一貫して50%を超える支持率を維持していた。しかし在任中に失った連邦議会と州議会の議席、そして州知事ポストは、歴代大統領の中で最も多かった。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 9
    ロシア軍が従来にない大規模攻撃を実施も、「精密爆…
  • 10
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story