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トランプ旋風が終息するために必要な「ある条件」とは
共和党は「トランプ主義」の政党に(選挙戦中のトランプ支持者)CARLOS BARRIAーREUTERS
<退陣が迫るトランプ政権だが、それだけでアメリカを席巻したドナルド主義が収まることはない>
私はこの夏、ジョージタウン大学で担当している「大統領への準備」という授業で、学生たちに一つの荒唐無稽なシナリオを披露した。
それは真剣な予測というより、議論のきっかけをつくることが目的だった。私は大真面目なふりをして学生たちにこう話した──大統領選に敗れたドナルド・トランプは2021年1月20日、ジョー・バイデンの大統領就任式を欠席し、同じ時間に別の場所で大規模集会を開きメディアの注目を奪おうとするだろう、と。この「ニセ予測」が、いまシュールな現実になろうとしている。
もしトランプが2024年の大統領選に出馬すれば、共和党内で太刀打ちできる対立候補は現時点で見当たらない。共和党支持者の大多数は、今回の大統領選の正当な勝者はトランプだと信じて疑わないらしい。
2016年の前回大統領選の共和党予備選で「次点」だったテッド・クルーズ上院議員もトランプへの恭順の意を示し、今回の選挙結果を覆すための法廷闘争で、弁護士として連邦最高裁でトランプ側の代理人を務めることに同意した。
アメリカは大統領制民主主義を生んだ国であり、世界で最も円滑で平和的でクリーンな政権移行のプロセスを誇りにしてきた。しかし、ハーバード大学で法学を学び、連邦最高裁長官の下で調査官を務めた経験を持つクルーズが、その伝統を破壊する旗振り役になっている。共和党は、トランプ主義にすっかり支配されているのだ。
共和党下院議員の中で、バイデンを勝者と認めている人はわずか27人。大統領選出馬を目指す共和党政治家は、共和党から爪はじきにされる覚悟がない限り、バイデンの勝利を公に認めることはできないのである。
トランプは共和党の資金調達の大半を牛耳っていて、党内の支持率でもほかの政治家を圧倒している。少なくとも差し当たり、共和党で成功したい政治家はトランプへの忠誠を誓うほかないのが現実だ。もはや共和党を動かす政策やイデオロギーは存在せず、全てがトランプを中心に回っている。
こうした「トランプ主義」はいつになれば消えていくのか。共和党が不満を主要な原動力にする政党へと変質した背景にあるのがトランプ主義だ。
トランプ主義は、非大学卒の白人(主に男性)の地位と威信を取り戻し、マイノリティーの台頭とグローバル化の進展によりこの層の優位が揺らぐ以前の時代へ回帰することを目指す。核にあるのは、エリートへの憎悪と、変化の速い世界への不安だ。
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