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MITメディアラボ所長「ジョイ」辞任で露呈した競争社会アメリカの暗部
伊藤の下で、メディアラボはこの分野で世界最高の研究機関になったが RUBEN SPRICH-REUTERS
<性犯罪で起訴され自殺した富豪の寄付を受けた、MITメディアラボと伊藤穣一の経済的プレッシャー>
アメリカのエリート大学が評判の急落に直面している。人気女優を含む多数のセレブが子供を世界トップクラスの大学に不正入学させた事件は、名門大学の実力主義の建前に大打撃を与えた。このスキャンダルの傷がまだ癒えないうちに、今度は「汚れた寄付金」問題だ。
特に驚かされるのは、こうしたアメリカの名門大学は学生から1人当たり年間約7万ドルを徴収しているというのに、経営は富裕層からの寄付に依存し切っているという事実だ。ある大学の幹部は先日、「授業料だけでは光熱費を賄うのがやっと」だと私に言った。
大口の寄付は大学の予算だけでなく、志願者集めの決め手となる大学ランキングでいい位置に付けるためにも重要だ。
世界最高の理系大学マサチューセッツ工科大学(MIT)は不正入学問題と無縁だったが、別のスキャンダルの直撃を受けた。同大学のメディアラボが買春目的の未成年人身売買容疑で逮捕され、獄中で自殺した富豪ジェフリー・エプスタインから寄付を受けていたという問題だ。この事件では性犯罪行為のひどさもさることながら、2人の米大統領を含む世界中のセレブに広がるエプスタインの華麗な人脈にも注目が集まった。
エプスタインは有力者との個人的な人脈づくりに加え、一流の組織や機関に近づくのも巧みだった。私は先日、ハーバード大学の卒業生の1人として学長からの電子メールを受け取った。
エプスタインは生物の進化や人間の認知機能など、さまざまな分野の研究に合計650万ドルの寄付を行っていたと知らせる内容だった。
一線を越えた行動の理由
MITの「汚れた寄付」問題はこれより悪質だ。メディアラボはMITで最も有名な研究センターの1つで、世界的に評価の高いスター研究者の「ジョイ」こと伊藤穣一が所長を務めていた。
紛れもない神童であり、文句の付けようがない業績を残してきた伊藤の下で、メディアラボはこの分野で世界最高峰の研究機関となり、伊藤自身もニューヨーク・タイムズ社、マッカーサー財団、ナイト財団といった一流の外部組織の役職に就いた。
だがエプスタインとの金銭的なつながりが発覚すると、MITでのキャリアは終わりを告げた。伊藤はメディアラボ所長を辞任。学外の役職も退いた。
伊藤は2008年3月13日、「自分に注意喚起。ろくでなしに投資したり、そういう相手から金をもらったりしない」と、ツイッターに投稿していた。前途洋々のスター研究者が自身の転落を予言したかのようなツイートだ。
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