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MITメディアラボ所長「ジョイ」辞任で露呈した競争社会アメリカの暗部
ピュリツァー賞受賞のジャーナリスト、ローナン・ファローはニューヨーカー誌に寄稿した記事で、メディアラボは伊藤の指揮の下、エプスタインとの関係の広がりを隠そうとしたと主張。「伊藤と他のラボ職員は、エプスタイン本人や彼が関与した寄付からその名前を切り離すため、多くの措置を講じた」と指摘した。伊藤は記事の内容を否定したが、直後にメディアラボの所長を辞任。スター研究者のパワーは失墜した。
伊藤のつまずきは、昔からある哲学的問いを改めて提起させる。目的は手段を正当化できるのか、という問いだ。
大学への寄付には常に「見返り」の問題が付きまとう。寄付する側は建物に自分の名前を付けてもらったり、知の最前線で活躍するスター研究者とお近づきになれたりする。
だが、伊藤の行動は一線を越えていた。エプスタイン自身に直接寄付を要請し、他の寄付者の仲介役になってもらうために便宜を図っていたからだ。
このエピソードは競争社会アメリカの負の側面を浮き彫りにした。伊藤のようなスター研究者ですら、たとえ汚れた金でもいいから、何としてでも寄付を獲得しなければならないというプレッシャーを感じていた。とすれば、組織の存続に苦労しているもっと地味な研究所や所長の事情は推して知るべしだ。
<本誌2019年9月24日号掲載>
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